――『伸芽会』以外でも何か受験準備はされましたか?

「ある日、患者さんと子どもの受験話になったとき、“幼稚舎はお金かコネが関係するから、お腹のなかにいるときから合否が決まっているようなもの”といった、恐ろしいホラー映画のような話を聞いたんです。

 私は幼稚園ママや塾ママとのコミュニケーションがほとんどなかったので、いわゆる“お受験情報”にはまったく精通していなかったので驚きまして。

 慌ててクリニックの昼休み、外に優雅なランチにも行かずにパソコンにへばりつき、いろいろな掲示板やお受験情報サイトを覗き見し、“ひょえーっ!”と声を上げながら、おにぎりをつまむ日々が続きました。そんな私をそっとしておいてくれる、歯科衛生士や受付のスタッフには感謝しかありません。

 加えて、ネットでさまざまなお受験バイブルも購入し、読み漁りました。こうした研究をするのがもともと好きなので、約1ヶ月でだいたいの情報を整理することができました。ちょうどこのときが年少の秋だったのですが、幼稚園の年長さんの受験結果が出た頃でもあったので、保護者のあいだで受験話も活発になっていたんですね。

 そこで、いつもなら幼稚園の前で子どもをおろしたら、そのまま早めにクリニックに出勤するのですが、近くの駐車場に車を停め、歩いて双子を送り、幼稚園ママさんとも徐々にコミュニケーションを開始し、朝カフェするまで仲良く(実際はどうかわかりませんが)なることができました。

 そして、この幼稚園に通うほぼ全員が慶應幼稚舎を目指しているという驚愕の事実を知ったんです……。さらに、みなさん両親のどちらかが出身であるか、兄弟がすでに在学中とかなんですよ。お受験掲示板に書いてあった慶應幼稚舎にまつわるドラマみたいな話が目の前にあったんです!」

――お受験の実態に初めて触れたと。

ええ、掲示板でたまに名前が出る、慶應専門の特別な人しか通えない個人の教室や、体操教室、お絵かき教室などが実際に存在したんですよ!! 

 ママさんたちの会話を聞いていて、コーヒーを吹き出しそうになるのを必死に堪えて飲み込み、平常心を装って多くを語りませんでしたが、本当に驚きました。

 みなさん、幼稚園が終わってから一緒に公園で遊び、時間調整をし、一緒にそのようなお教室に通われているそうです。しかも普通に。シンガーズに丸投げの私には知る由もない、降園後のルーティンワークがあったんです。

 ただ、いまさら何をやっても結果がどうこうなるわけでもないので、いつも勉強をみてくださっている『伸芽会』の先生にご相談しながら、できる準備はしっかり進めていきました」