<コミュニケーション 編>
人見知り→アイコンタクトを増やす!
以前、バラエティー番組の『人見知り』がテーマの回で、お笑いコンビ・オードリーの若林正恭さんが、「楽屋など、大勢の人がいるシチュエーションでは、飲み物のパッケージの裏側にある文字をひたすら読んでいる」という自身の人見知りエピソードを披露されていました。俳優の中井貴一さんも、若いころは人見知りであったことを公言されていますし、実は世の中、人見知りだらけなのかもしれません。
人見知りとは、往々にして「相手の目を見ることが苦手」、ということではないでしょうか?
実は、「あえてアイコンタクトを増やすと会話への参加度合いが高まる」ということが、クイーンズ大学のバーテガールらの実験でわかっています。
実験では3人組に、パソコンの画面を通してビデオチャット的にグループ会話をしてもらい、会話への参加度合いを比較しました。被験者は1人だけで、残りの2人はサクラです。
結果、話しているときに聞き手が適宜、アイコンタクトをした被験者は、あまりしなかった被験者よりも、会話への参加度合いが22%も高かったのです。
つまり、アイコンタクトをしながら話すと、相手がよりたくさん話してくれるということです。
また、テキサス州にあるコミュニケーション分析を専門とする企業『クォンティファイ・インプレッションズ』によると、人は会話をしているとき、相手の目を見ている時間は通常30~60%程度ですが、アイコンタクトの時間が60~70%になると、より深い心理的なつながりを感じ始めるという調査結果もあります。
ですから、話したくても話せない、という人は、まずアイコンタクトを増やすことから始めてみてはいかがでしょうか? 自然に会話の量が増え、場が温まっていけば、人見知りなあなたでも打ち解けやすくなるはずです。また、「目は口ほどに物を言う」といったように、目で訴えかけることで、相手と会話したい・親しくなりたい、という気持ちも伝わりやすくなります。
また、脳は身体の動きに騙される特徴があるので、「アイコンタクトをしたら会話する」、ということを自分の中でルールづけしてしまえば、いずれ「目を見たら会話に参加する」という行為も臆することなく、当たり前のようにできるようになるかもしれません。
気がきかない→文学作品を読みまくる!
飲み会で上司のグラスが空なのに気づかない、会議資料をクリップなどでまとめずバラバラで配って手間をかけさせる……ほんのちょっとの気配りを欠いただけで“気がきかないヤツ”と言われてしまうのは、もったいないことです。
一方で、気がきくと褒められるのは、大荷物で困っている人がいたら声をかける、自分がドアを閉めるタイミングで誰かが来たらサッと開けるなど、相手が求めているものをすぐに提供できる人がほとんど。気がきく行動というのは、相手の立場になって考えたり行動したりできる、すなわち、相手に「共感」するからできることです。
実際、チューリッヒ大学のハインらの研究では、困っている他者を助けるときには、脳の共感と関わりがある部位が活性化していることがわかっています。
逆にいえば、気がきかない人というのは、共感性が低い人だということがいえます。では、どうしたら共感性を高め、人に親切になれるのでしょうか?
小説を読むことで共感性が高まることが、ニューヨークのニュースクール大学のキッドとカステイノの研究で明らかになりました。
実験では被験者を4グループに分け、それぞれに、(1)大衆小説、(2)(純)文学作品、(3)ノンフィクション を数分間読む、(4)何も読まない という行動をとってもらったあと、他者の考えや感情を想像したり理解したりする能力を測るテストを実施。
結果は、(2)の文学作品を読んだグループがもっとも高い点数を取り、しかも、文学的な作品が嫌いな被験者にも好結果をもたらしました。
文学作品は、登場人物の状況や心理的背景がしっかりと描かれているものがほとんど。それらを読むことで、感情移入した結果、他人の人生への共感や理解につながるということです。
気がきかない自分を自覚しているなら、周りをよく見て意識的に他者への親切行動を増やしつつ、日常的に文学的な小説を読むことがおすすめです。
さまざまな困難と立ち向かいながら成長や変化をしていく主人公に気持ちを寄せることで、身近な人たちへの共感性も高まり、いずれ気がきく人へと成長できるでしょう。
【著者プロフィール】
堀田秀吾(ほった・しゅうご) ◎明治大学教授。言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了。言葉とコミュニケーションをテーマに言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を融合した研究を展開。熱血指導と画期的な授業スタイルが支持され、『明治一受けたい授業』にも選出される。研究の一方で「学びとエンターテインメントの融合」をライフワークとし、研究活動において得られた知見を活かして書籍を多数執筆。テレビ番組『ワイド! スクランブル』のレギュラー・コメンテーター、『世界一受けたい授業』『Rの法則』にも出演するなど、多岐にわたる活動を展開している。