50代で生活習慣を徹底的に改善する
運動も関係あるという。
「運動機能を司る脳の部分には老廃物がたまりやすいといわれています。午前中にしっかりと活動し、身体を動かし運動不足を解消させ、頭を目覚めさせることが大事ですね。昼の活動の質が高ければ高いほど、夜の睡眠が深くなることがわかっています」
肩や腰が痛かったり、肥満で身体の動きが制限されれば運動不足になりかねない。動かなくなると認知症が進行する悪循環に陥る危険も。
さらにハイリスクなのが高血圧、動脈硬化、糖尿病といった生活習慣病、難聴などの持病がある人。また、うつ病や免疫力の下がるがんは認知症の発症につながるだけでなく、認知症がそれらの病気を悪化させる可能性も。
年齢もひとつの基準になる。
「78歳を過ぎると急にアルツハイマー型認知症が増えることが世界中で指摘されています。75歳以降は夫婦で注意し合い、疑って過ごすことがとても重要だと思います」
もっと言えば、50代以降の中高年の運動不足、睡眠不足を改善すべきだと加藤医師は指摘する。
「予防はまず若いときから。昼間の活動の質を上げて、夜7時間以上眠る生活習慣に徹底的に戻すことが重要です。寝ることでストレスも減り、記憶力も戻ります。私も7時間以上眠るようにしています。59歳ですが10時間以上働いても、40代や50代前半より圧倒的に疲労感は少ない」
新しいことに挑戦! 工夫して認知症予防
新型コロナ禍で症状が進行している可能性がある。
「外出自粛で予定がないこと、先が見えない不安も進行に拍車をかけています」
おまけに数か月、自宅にこもることで記憶力が抑制されている傾向にある。最近の話題を思い出せないのは脳が学習できていない状況だ。
「ちょっとした工夫で予防できると思います。例えば施設に入所していれば家族が会いに来る日、一時帰宅の日など先のプランを立ててあげることもとても大切です」
自宅暮らしの高齢者なら、
「出かける理由、1日過ごすための理由といった、生活に何らかの理由を持たせることも予防になる」
例えば、健康番組を見てそれに習って運動したり、身体にいいと紹介された食材を買いに行くなど、新しいことにチャレンジすることが大切。
そして家族の存在は欠かせない。役割を持たせ、孫や子どもが高齢者自身の存在価値や意義を高めることも予防には重要だという。
若いころにできなかったことに挑戦するのもひとつ。
「女優になりたかったなら演劇、落語家なら落語を習うなど、今までできなかったことに挑戦するのも記憶力のアップにはすごくいい」
高齢者でも新しいことをしている人は脳の認知機能が非常によい状態だという。
「脳はいくつになっても成長します。1日を楽しんで今日も明日も成長できるように生活していただきたい」
教えてくれたのは……
脳内科医 加藤俊徳院長(加藤プラチナクリニック)
「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳番地トレーニングの提唱者。加藤式MRI脳画像診断法を用いて、認知症、発達障害を診断治療。著書に『脳が若返る! 記憶力育成ドリル』(宝島社)ほか多数