「死にたい」理由の発端は、兄からの性的虐待

 そもそも、美葉が明確に「死にたい」と考えたのは高校1年生のころだった。ただ、言葉として「死」が頭に浮かばなかったものの、中学のころからコンパスで手をえぐる自傷行為を繰り返すことも。社会科のプリントには「家に帰りたくない」と書いたこともあり、突然、兄に対して憎しみが湧き、「死ねよ」「殺したい」と思うこともあった。その理由を聞いてみると、美葉は兄からは性的虐待を受けていたことを告白。それは、小学校2年生から中学2年生までの6年間にも及んだ。

「最初に身体を触られたのはお風呂に入っていたときでした。小学校4年生のときに、兄とセックスしました。最初は何をしているのかわからなかったんですが、恥ずかしいとはわかっていました。いつも、性的虐待の最後に兄は『誰にも言うな』と言うので、従っていました」

 美葉は、兄に対してはアンビバレント(相反する寛容や考え方を同時に心に抱いていること)な気持ちがあったという。

痛いし、怖いんです。また痛い思いをしないといけないと思ったりしました。でも、刺激を待っていたときもあったんです。一方で、身構えていた面もありました。矛盾ですよね。しかも、兄は避妊はいつもしないんですよ。抵抗すると『うるさい』と言うので、諦めていました。はたからみると、普通のきょうだいでしたが……」

兄との関係を母親に知られて

 中学1年生のとき、兄との関係を母親に知られてしまう出来事があった。

「エアコンをつけながら、妹と並んで部屋で寝ていたら『涼しいじゃん』と言って、兄が間に入ってきました。兄は妹に『早く寝なさい』と言って、私も寝ようとしていたら、母親が洗濯物を置きに部屋に入ってきたんです。でも、そのとき私はすでに脱がされている状態だったので、母親は『何をしてるの!』と。あとで兄との関係を聞かれ、とっさに『小5から』とウソを言いました。あとで知ることになりますが、妹も触れられたことがあったようです」

 兄は反省したのか、しばらくは手を出してこない時期もあったが、2年生の夏から再発。そして翌年の2月、美葉が担任の先生に話したことで児童相談所に保護されることになった。