依存症とストレスの意外な関係性とは
堀田 ありがとうございます! 山下先生は認知行動療法(うつ、不安、発達障害、各種依存症)を専門とされていますが、コロナが拡大して以降、相談者の数は増えたのでしょうか?
山下 実は、今年の春ごろの第1波が来た当初は減ったんですね。
堀田 そうなんですか!?
山下 東日本大震災のときもそうだったのですが、より大きなシビアな問題が起こると、自身で抱えている悩みの種が相対的に小さくなることで気持ちが楽になり、一時的に相談者も減少するようです。
ところが、緊急事態宣言が明けて夏になるくらいから、先述したように興奮が薄れてきたことで、相談者が増えてきました。興奮がおさまってくると既存のストレスと向き合わなければいけなくなる。ただし、一般的にはストレスと依存症は関係ないと言われています。依存症はあくまで病気であって、だからこそ依存しているわけですから。
堀田 なるほど。ストレスはきっかけにはなるかもしれないけど、依存症とは直接的な因果関係はないとも言われていますよね。
山下 依存症になっているときに、ストレスが加われば加速するでしょう。「酒をやめろ」と、アルコール依存症の人に言うと、精神的な負荷がかかり、かえって飲みたくなってしまう。
また、原因不明なことを「ストレス」や「自律神経の乱れ」という、あいまいな言葉で片づける節もありますね。
堀田 確かに、じんましんが出ると「ストレスのせいだよ」なんて言われるなぁ。ストレスを抱え込まないためにできることはたくさんあると思うのですが、アルコール、ギャンブル、薬物……そういった依存症にならないためには、何に気をつければいいでしょう?
山下 人がアルコールや薬物に依存してしまう原因はシンプルで依存物質の頻回かつ長期間の摂取です。お酒も、いきなり子どもがワインや日本酒をなめて「美味しい」と感じることはまずありえません。しかし、果汁を入れたり冷やしたり炭酸を入れたりして飲みやすくしたアルコール飲料を飲み続けると、いつしか甘くないビールや、炭酸が入っていないワインなども「美味しい」と脳が感じるようになってしまいます。
そして、飲酒量が一定量を超えると、今度は離脱症状と呼ばれる「飲まないと眠れない」「酒が切れると手が震える」などの症状が出てしまうのです。心がけでどうにかなるわけではなく、メンタルが強い、弱いといったことも関係ありません。その依存物質がこの世にあり続けるからそうなってしまう。依存症の人に対して、「メンタルが弱い」というのは間違っているんです。
堀田 去る9月には、元TOKIOの山口達也が酒気帯び運転の疑いで逮捕されましたね。アルコール依存症とも言われていますが……。
山下 特に芸能界にいる人の場合、よきにつけあしきにつけ注目を浴びやすいのですが、彼らも病気の患者なんです。ただ石を投げるのではなく、一般の人も正しい知識を身につけることが大事です。「明日はわが身かもしれない」という視点を持ってほしいのです。
現在、日本には依存症患者が100万人いると言われています。ただ、どこからが依存症なのか─というのは、人それぞれなんですね。