薬の使い方次第で便を出せない身体に
何日も便秘が続くと、つい薬に頼ってしまうことも。
「便秘薬を一時的に飲むのは決して悪いことではありません。ただ、どの種類の便秘薬を飲んだとしても、その薬を飲むのが習慣になってしまうのは問題です。薬の効果が出ていれば出ているほど、自分で生活習慣を正して排便をコントロールできる機会は減ってしまいます。その結果、自分で便を出しにくくなり、便秘薬を手放せなくなるケースもあります」(笠木先生、以下同)
便秘が急に起きたのか、慢性的なのかによっても、対処法が違うという。
「急に起きた便秘の場合は、ストレスが原因になっていることもあります。例えば引っ越しや転職、特に人間関係の変化があったかをチェックしてみましょう。同時に睡眠はとれているのか、気温や湿度の変化があったか、そのストレスが今後も持続するかを確認するのも大切です」
慢性的な便秘は、さまざまな心理的、肉体的ストレスが以前から持続的に続いているケースや、生活習慣が影響している場合もあり、セルフチェックが難しい。慢性的な便秘なら、専門外来の受診をおすすめする。
一方、病的な便秘でない限り、軽い運動や食事や睡眠など生活習慣の工夫で便秘は改善可能。
「毎日の生活で、どこか不規則なところがあれば改善し、規則正しい生活に戻す必要があります。よく言われることですが、朝起きて、朝食を食べてトイレに行き、日中は適度に動くこと。また昼食や夕食を決まった時間に食べて、夜更かしせずに寝ること。とても簡単なようでいて、この当たり前のことができていない人が多いのです」
まねしやすい便秘解消テクを紹介したので、ぜひトライしてみてほしい。
「排便は基本的に毎日のこと。紹介した方法を、自分の便秘のタイプに合わせて無理のない範囲で地道に続けることで、便秘は改善していくはずです」
・腸がねじれる病気「腸閉塞」で便秘が起こっていることも
便秘の中には、明らかに病気が原因のものも。そのひとつが「腸閉塞(イレウス)」です。腸閉塞は何らかの原因で、腸管の流れが阻害されてしまう状態のこと。排便ができなくなるだけでなく、嘔吐することも多いため、悪化する前に受診する必要があります。
みなと元町内科クリニック院長。神戸大学医学部卒業後、米国国立衛生研究所の特別研究員、大学病院勤務などを経て2018年に開業。丁寧な問診で薬がいらなくなる診療を目指している。
(取材・文/樋口由夏)