【症状と治療】“いつもと違う”に注意

「脳梗塞の治療は、時間との勝負。血栓を溶かす治療にはタイムリミットがあるのです。小さな症状でも、迷わず救急車を呼んでいい。救急隊は脳梗塞の症状を熟知しているので遠慮することはありません。1分治療が早まれば、1日健康寿命が延びるといわれています」

 脳梗塞のサインは、以下に示した「BE FAST(ビーファスト)」と呼ばれる5つだ。

■見逃さないで! 脳梗塞のサイン「BE FAST」

【B】(Balance)……身体のバランス

突然、身体のバランスを失う。身体がふらつく。

【E】(Eye)……目の見え方の異常
片方だけ見えなくなる。両目の視野が欠ける。

【F】(Face)……顔の麻痺
顔の左右どちらかがゆがむ。「イー」と発声し口角の高さが違うと麻痺があると判断。

【A】(Arm)……腕の麻痺
片方の腕が麻痺する。目を閉じ、手のひらを上にして水平になるように両腕を上げてもらい、片方の腕が下がってくると麻痺が起こっている。

【S】(Speech)……言葉の障害
ろれつが回らずうまくしゃべれない。舌がもつれて言葉がスムーズに出てこない。意味不明なことを言う。

【T】(Time)……すぐに救急車を
上記の症状があれば、すぐに救急車を呼ぶ。一見軽症でもしばらくたって大きな発作が起こる可能性がある。

「脳梗塞の症状は多岐にわたるため、“いつもと違う”がポイント。いつもより左右どちらかの顔が下がっている、ろれつが回らない、言葉が出ない、フラフラしている……決して“疲れているから”“寝不足だから”と自己判断しないようにしてください」

 症状を見逃さないことが大切なのだ。

「脳梗塞は突然起こりますが、一過性虚血発作といって予兆となる症状が出ることがあります。小さな症状の後に、大きな脳梗塞が起こることもあります」

 血管が詰まると、その先の神経は壊死(えし)してしまう。その範囲が時間を追うごとに広がるので一刻も早く治療が必要。

「t-PAという血栓を溶かす点滴で治療することができます。ただし、この治療は発症から4時間半以内という制約がある。朝起きて症状が現れていたなど発症時間がわからない場合は、MRIを使って特定することも」

 大きな血管が詰まった場合には、カテーテルで血栓を取り除く血管内治療を行うこともある。

「現在はt-PA治療が行える医療機関(一次脳卒中センター)に救急搬送するシステムが整い、95%はカバーできるといわれています」

【予防】高血圧、糖尿病、肥満、喫煙はリスク大

 そもそも脳梗塞を予防するためには?

「高血圧は最大のリスク。40歳を過ぎたら毎日決まった時間に血圧を測りましょう。前の日に家族とケンカをしただけでも血圧は上がりますから、日々の自分の血圧を知っておくことが重要。収縮期が140、拡張期が90を超える日が続いたら医師の診察を受けて

 高血圧になると、一生薬を飲み続けなければならない?

「運動療法や体重管理で血圧が下がることも。薬も進化していて、動脈硬化を改善してくれたり認知症の抑制などのプラスα効果があるものもありますよ」

 また、糖尿病や脂質異常などもリスクが高い。

「塩分のとりすぎ、食べすぎ、飲みすぎ、運動不足など生活習慣を見直し、肥満があれば改善を。日本人は塩分感受性が高く、塩分で血圧が上がりやすい人種。しかも塩辛いものを好むので控えめに。また、タバコを吸う習慣のある人は今すぐ禁煙して。タバコを吸っていると、クスリの治療効果がゼロになります

 また、動脈硬化を調べる検査や脳ドックでリスクを知ることも重要だ。

「“予防に勝る治療なし”、脳梗塞はまさにこれにつきます」