災害不調解消テク
災害不調の根本原因は「不安」。その消し方は、知れば簡単なものばかり!
「災害不調は単なる身体の疲れと似た症状も多いため、見過ごしやすいんです。ここまでで災害不調の知識を身につけたら、次は家族や自分の体調を見直して。災害不調と単なる疲れとの違いは、軽い運動をした後、すっきりするかどうかです」
身体を動かして疲労感がとれるようなら、災害不調の可能性がある。
災害不調を抱えていると自覚したら、次から紹介する解消法を試してみよう。工藤さんが多くの患者を診察し、自身も「コロナうつ」に悩んだ経験から導き出したテクニックは、どれも簡単で効果抜群。「不安を秒でなくす方法」として工藤さんがおすすめするのが、食事や書き物などを、利き手と逆の手でやること。人間はふたつのことを同時にできないため、行動に集中し、不安を忘れる。不安な時間を減らすことが重要だ。
小さな不調が起こす大きなトラブル
「不安」が募ると、やがて怒りに変わる。前述したように、災害時はストレスにより衝動などの抑制を司る前頭前野の機能が弱りがちで、怒りの抑制が難しくなり、人間関係に悪影響を及ぼしがち。
不調が小さなうちに、対処していこう。ただ、災害不調といっても、胸の痛みや強い圧迫感、呼吸困難がある人は要注意。61ページで紹介したように、ストレスから心疾患を起こしている可能性がある。すぐに医師に相談を。
掃除や土いじりで身体を動かす
災害不調で気持ちが落ち込みがちなときは、とにかく身体を動かそう。掃除をして手を動かすことに集中していると、自然と不安を忘れる瞬間があるはず。土いじりは、自然と触れ合う癒し効果も。午前中に庭に出れば体内時計も整う。
朝日を浴びながら牛乳を飲む
「朝日とともに起きて日光を浴び、昼間は狩りで身体を動かし、夕暮れには家族の時間を持ち、暗くなったら眠る」。そんな生活は、自律神経を整え、脱・災害不調に効果大。ただ、現代社会ですべてを実現するのは難しいもの。工藤さんいちばんのおすすめは、朝日を浴びながら牛乳を飲むこと。朝日は、人間に幸せを感じさせてくれる物質、セロトニンの分泌を促し、体内時計を整えてくれる。一方、牛乳はセロトニンの原料となるトリプトファンが豊富。セロトニンは約16時間後に安眠に導くホルモン・メラトニンに変わるため、睡眠リズムを整える。
連絡はオンラインより電話がおすすめ
新型コロナの影響下で、ビデオ通話機能を使う人も増えたはず。実はオンラインよりも電話で声だけを聞くほうが、“愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンの分泌量が多くなる研究結果があるそう。息遣いや声の調子に集中し、想像が膨らむため、相手の存在をかえって身近に感じることができるのだ。
不安なニュースはオフ! 情報断捨離をする
災害時、テレビは深刻なトーンで恐怖や危険を伝える関連ニュース一色に。さらにスマホを見れば、極端な意見があふれている。身体を使わず、ネガティブな情報にさらされると、脳ばかりが疲労し、不調をきたす。まずは週末だけでもテレビを切り、スマホを置いて“情報断捨離”を。
日記をつけて悩みを書き出す
自分の行動を記録すると、「曇りの日は気分が落ち込みがち」など、自己分析ができ、備えやすくなる。日記には、天気/気分/最高気温/湿度/食事内容と時間など、不調に関係ありそうな項目を書こう。ネガティブな気持ちを日記に吐き出してもいい。「たくさんあると思っていた不安やモヤモヤも、書き出してみると意外と少ない」と気づく人が多いはず。吐き出したら、解決法があれば即行動。解決法がないものはそれ以上考えないこと。日常を書き留めるうち、「今日も家族が元気に暮らせた」など、小さな幸せに気づくことも。
(取材・文/仲川僚子)