女性のためのアミューズメントパークへ

 一心、一途に仕事に打ち込み、行列ができるほどのクリニックに育ててきた。

 そんな八田先生が、目指しているのは、クリニックを「女性のための小さなアミューズメントパーク」にすること。着々と準備を進めている。

「空き部屋だったクリニックの2階を、一面鏡張りのスタジオに改装しました。妊婦さんや更年期女性のエアロビクスなど、女性の健康づくりに役立てようと計画中です」

 インストラクターは、ほかでもない八田先生。20代からエアロビクスを続け、医師でありながら、日本マタニティフィットネス協会認定のインストラクター資格を持つ。

 また、医食同源の考えから、クリニックの一角に、小さな台所を作り、『キッチン・ヴェスタ』を開いた。

「食事から身体を変えてほしい」と院内の一角でカフェも始めた
「食事から身体を変えてほしい」と院内の一角でカフェも始めた
【写真】10代のころの八田先生、同級生からは「高嶺の花だった」とも

「地元の農家さんと契約して、有機栽培の野菜で作ったお惣菜の販売を始めました。こだわりの調味料で丁寧に作るうえ、材料費が高いため、いまのところ大赤字ですが患者さんには大変喜ばれてます」

 さらに、構想を練っているのが、女性の腟や外陰部のトータルケアをする「おしもの美容室」だ。

「気軽に美容院へ行く感覚で、パッと来て、さっと腟を洗浄して、ドライヤーでふわっとヘアをブローするような(笑)」

 多くの女性を内診してきた経験から、「あったらいいのに」と実感したそう。

「高齢者施設に入っている、おばあちゃんとか、男性の入浴介助だったりすると、なかなかおしもを細部まで洗えてない方も多いんです。きちんとしたケアができれば、病気の予防にもなります。また、更年期世代の女性も、腟まわりが乾燥してかゆくなったり、においが強くなり加齢臭も出てきます。そういった悩みも解決したいと思っています」

 八田先生は、レーザー治療で腟のアンチエイジングを行い、学会や論文でも発表している、『フェミニンゾーンケア』の第一人者でもある。

 だからこそ、「腟から女性たちを元気にしたい!」と意気込む。

「腟って秘密の場所というイメージだけど、気軽にお手入れできれば、気分も上がるし、女性として自信もつきます。医療だけでなく、こういう日常ケアにも着目し、女性のヘルスケアとして積極的に取り入れていきたいですね」

 行動力はお墨付きの八田先生だ。思いを実現していくに違いない。女性たちの力強い応援団、いや、応援団長として!

〈取材・文/中山み登り 撮影/山田智絵〉

なかやま・みどり ●ルポライター。東京都生まれ。高齢化、子育て、働く母親の現状など現代社会が抱える問題を精力的に取材。主な著書に『自立した子に育てる』(PHP研究所)『二度目の自分探し』(光文社文庫)など。大学生の娘を育てるシングルマザー。