最近、特に多く見かけないだろうか。ゴソゴソ動くあの黒い物体……。コロナ禍の環境がさらに好条件となっていて、駆除業者へのオーダーが急増、対策グッズも売れている。ヤツらが最盛期を迎える7月。ここで手を打っておけば、来年度の発生率もグッと抑えられる。
ステイホームはゴキブリの“スイートホーム”
「今年の夏は、いつも以上にゴキブリが多くなりそうです」
そう話すのは、虫ケア用品の日本最大手、アース製薬の有吉立さん。兵庫県にある同社研究所で、日々、ゴキブリをはじめとする数万匹もの害虫の生態を研究する女性だ。
「家庭でよく見るのはクロゴキブリ、飲食店などに多いのがチャバネゴキブリ。コロナの影響もあって、このクロゴキブリの好む環境が住まいに整ってしまったことが、その原因のひとつ」
去年からステイホームが日常化。家での食事が増えてゴミが増し、家電の消費アップで家の中で暖かい場所も増加。人間のステイホームはゴキブリのスイートホーム。昨年の夏は、業者へのゴキブリ駆除の依頼が前年同月比で倍以上の238%(「くらしのマーケット」)になったが、今年はすでにそれを上回る勢いだ。
クロゴキブリは屋内と屋外を移動し、気温の下がる冬季は休眠している。寒い間あまり姿を見ないのはそのためだ。ところがコロナ禍によってその習性に大変化が起きてしまった。
「家にいる時間が長くなったことで、寒いはずの冬でも屋内の温度や湿度は相対的に高いままに保たれ、活動量が落ちないまま冬を越すんです」
宅配などを利用することで多くなる段ボールの影響も大きい。段ボールの紙と紙の隙間はゴキブリの大好きな隠れ場所。幼虫や卵が外から持ち込まれたり、無造作にため込んだ段ボールが格好のすみかになったりもするそうだ。
ゴキブリはほぼ1年かけて卵から成虫になる。夏に孵化(ふか)して屋内、屋外と移動しつつ、次の夏前には卵を産めるまでに成長する。手を打つなら今が大事なのだ。
外から侵入する個体が多く換気口やエアコンのドレンホース周りなどは絶好の通り道。窓やドアの隙間や洗濯機、洗面所の排水口は当然のこと、数ミリあれば入ってくる。
「数十メートルは移動できるということもわかっていますから、例えば、マンションの高層階でも油断できません。扁平な体でほんのわずかな隙間でも十分。快適な温度と湿度、そして豊富な食べ物は彼らにとっても魅力的ですから」
と有吉さん。
では、結局のところ、住まいからゴキブリを消し去ることは難しいのだろうか。防虫剤への耐性を獲得した「スーパーG」も出てきたという。