一方でジェネリック医薬品は、冒頭の業務停止命令の例があるように、品質管理に問題がある場合も。ひとつの新薬に対して大小さまざまなメーカーからジェネリック医薬品が発売されるため、その質については玉石混交だ。
「アメリカには国家食品医薬品監督管理総局というものがあり、品質管理の審査は厳重。対して日本のジェネリック医薬品メーカーは各県の薬事監視員がチェックをしていますが、それでも前述の不正事件が起こっている。一流もあれば三流もあるというのが現状です。名前も知らないようなメーカーの安い薬というのは、医療機関や薬局の薬価差益(薬を出すことで得られる利益)が大きかったりもする。現在は医薬分業がだいぶ普及してきましたが、昔は儲けのために好んでジェネリックを院内処方する医者もいたようです」
ジェネリックのデメリットはほかにどんなものがある?
「そもそも、ジェネリック医薬品というのは、新薬とまったく同じモノというわけではありません。デパートで同じものを買っても包装がそれぞれ違うように、主成分や容量が同じであっても、添加物などの成分比率は製品により違う場合があります」
食品の添加物を気にする人は多いかもしれないが、薬の添加物まで気にしたことがある人などほとんどいないだろう。しかし、それらが薬の有効性や安全性に影響を及ぼす可能性もないとはいえない。また、ジェネリック医薬品は新薬と「まったく同じ薬効」があるとは、厳密には言い切れない理由もある。
「ジェネリック医薬品は人工胃液を用いた溶出試験によって、新薬と同じように胃で溶けるかどうかの実証が義務づけられています。その結果が新薬と同一でなければ発売することができません。しかし、実際に患者に投与する臨床実験で直接同じ薬効があると確認しているわけではありません。要は、同じ主成分で同じように胃で溶けるから新薬と同じように効くだろうという考え方です」
人への臨床実験というのはかなりコストがかさむ分野でもある。そこがすっぽり抜け落ちているため、ジェネリック医薬品は価格を安く提供できるというカラクリだ。
さらには、長く使われ続けてきた先発品と比較すれば、ジェネリック医薬品は副作用などに関するデータがまだまだ蓄積されていないものも多い。万が一副作用が起こった場合、医薬品メーカーにそのデータや知見があるかないかは、服用する側からしてみるとかなり重要な問題である。
医療費を抑制したい政府の思惑
見方を変えれば、ジェネリック医薬品は「新薬とは異なる成分で、確実な効き目が立証されているわけではない、データの蓄積も少ない薬」と捉えることもできるわけだ。そのようなデメリットまできちんと理解したうえで、安さと天秤にかけて選択する必要があるはずだが、その部分は十分に知らされないまま“ジェネリック誘導”がなされているのが現状だ。では、なぜいまジェネリック医薬品が多く処方されているのか。
「高齢化に伴い、医療費が逼迫している日本の医療現場では、ジェネリック医薬品はなくてはならないものになっています。全医薬品を安いジェネリック医薬品にすれば、単純計算で医療費の2~3割を削ることができるので、財務省はなりふり構わず推奨したい背景があるでしょうね」
高齢化が進む中で、国としても医療費の問題は避けられない。日本のジェネリック医薬品の使用率(後発医療薬のある病気における後発医療薬の使用量の割合)は、2020年の時点で78%を超えるほどだが、未来の財政を考えると“ジェネリック誘導”はさらに加速しそうだ。