ジェネリック医薬品を処方することは、病院や薬局にとってはメリットも多い。薬局には「後発医薬品調剤体制加算」という制度があり、ジェネリックを多く出した薬局は報酬が手厚くなる。病院などの医療機関にも同様の制度が組み込まれており、簡単に言えば、ジェネリック医薬品をひとつでもまぜて選べる処方にすることで保険点数の加算を得られる仕組みになっているのだ。
長尾先生のクリニックでは「一般名処方」というかたちをとっており、患者が希望する場合は薬局でジェネリック医薬品にするかどうかを自由に選べるという内容の処方箋を出している。
「ジェネリック誘導はもはや国策なので、内心は新薬がいいと思っていても、その潮流に歯向かう医者はほとんどいないと思います。ジェネリック医薬品がなければ病院や薬局の経営は成り立たないし、さらにはこの国の医療自体もジェネリックがないと成り立たないというわけです」
国や病院、薬局へのメリットが十分にあることはわかったが、患者当人にとってジェネリック医薬品を選ぶメリットはどんなものだろうか。
「まずは安さでしょうね。例えば、帯状疱疹で処方する抗ヘルペスウイルス薬の新薬などは比較的薬価が高いものが多いのですが、ジェネリック医薬品に替えることで、薬局の窓口で支払う金額は半額近くに変わります」
安くて品質の高いジェネリックも増えている
錠剤の溶けやすさや飲み込みやすさなど、新薬の使いづらかった部分を改良する製薬工夫ができるのもジェネリック医薬品の利点だ。新薬の場合、許可なしに形状を変更することはできないため、薬の改良も簡単にはできない。ジェネリックならば、新薬の短所をうまく解消することで、お年寄りや小さな子どもにも飲みやすい薬を生み出すことができる。さらには、ジェネリック医薬品はたくさんのメーカーによる競争が起こるため、「安かろう、悪かろう」ということではなく、安くて品質の高い薬品も増えている。
「実際に院内でジェネリックに替えて、数値的にも明らかに快方に向かった患者さんがいたり、逆にぜんぜん効かずに新薬に戻したというケースもあります。胃潰瘍や逆流性食道炎で処方するPPI(プロトンポンプ阻害薬)などは、胃の痛みや胸やけがきちんと解消されているか、患者さん自身が薬の効き目を実感しやすい。ジェネリックに替えたときに“あれ、新薬より効いてるな”などと感じて、そのまま次回からもジェネリックを希望する方もいますね」
とはいえ、ジェネリックを選ぶ以前の問題として、自分が処方された薬がジェネリック医薬品かどうかを理解しないまま使っている人もたくさんいるのではないだろうか。
「薬品の名前を見ればひと目で確認できます。ジェネリック医薬品は【成分名+容量+「メーカー名」】というルールで名前がついているため、薬の名前の最後に製薬会社名がついていれば、それはジェネリック医薬品。主成分の一般名がそのまま薬の名前になっていますが、新薬は『ロキソニン』など、独自の商品名がつけられています」
どの薬がジェネリックなのかわかったところで、それを選ぶかどうか、患者にとっては判断する材料がほとんどないというのが実際のところかもしれない。そんななか、薬の賢い選び方というのはどのようなものだろうか。