新技術で長い時間香りが残るように
アンケートでは頭痛や吐き気などさまざまな症状が挙げられたが、これらの症状は、更年期障害やストレスによる不調と重なる部分も多い。
「香りによる不調でも疲れやストレスなど、ほかの原因を疑うことも多く、香りが原因だと気づいていない人も多くいるのではないかと考えられます」
なかには、前出の藤森さんのように突然ある日症状がひどくなるケースもある。香りによる体調不良は、一部の香りに敏感な人だけに起こる問題というわけではないのだ。
●体調不良の原因となった香り製品は? (複数回答)
・柔軟剤 86.0%
・香りつき合成洗剤 73.7%
・香水 66.5%
・除菌、消臭剤 56.8%
・制汗剤 42.5%
・アロマ 28.5%
出典:「香り被害についてのアンケート」結果(香害をなくす連絡会)
アンケートで香りによる被害のいちばん多い原因として挙げられていたのが柔軟剤だ。香りつき柔軟剤の生産量が国内で増えたのは、2009年にアメリカから輸入された柔軟剤が消費者に受け入れられたことがきっかけで“香りブーム”が起こったから。
国内メーカーは香りを強調する商品を次々に開発し、それに伴い、香りを長持ちさせる技術開発もすすんだ。そして使われ始めたのが「マイクロカプセル」という新技術だ。
マイクロカプセルは、プラスチックなどでできた薄い膜の中に香料などが閉じ込められていて、摩擦などでカプセルが壊れるたびに中から香りが発生する仕組みになっている。すべてのカプセルが壊れるまでは、新鮮な香りが放出され続けるため、“香りが長持ち”するのだ。
「製品評価技術基盤機構の調査によると、54・6%の人が日常的に柔軟剤を使用しています。そのため、柔軟剤の香りがする衣服を着た人にさまざまな場面で遭遇することになり、またその香りがマイクロカプセルによって長持ちするからこそ、柔軟剤が香害の原因になりやすいと考えられます」(水野さん)