日本人の死因の上位を占める肺炎。中でも誤嚥性肺炎が問題になっている。肺炎で亡くなるシニアの約7割が誤嚥性肺炎なのだ。最大の原因は「のど力」の低下。予防には、ワクチン接種と口腔ケア、さらに50代のうちから「のどトレ」で鍛えることが重要だ。簡単にできるトレーニングで、健康なのどをキープしよう。
のどは使わないと衰えていく
いまだマスクが手放せない生活が続いている。会話が減ったり、人と会う機会が少なくなったりしたせいで、のどの“老化”が進んでいる可能性があるという。
「のどの老化は一般的に60代からといわれています。60代になると、のどの筋力が急激に低下するためです。ところが、のどは使わないと衰えていくので、40代や50代でもリスクが。会話が以前より減るなどしている人は要注意です」と話すのは、呼吸器専門医で池袋大谷クリニック院長の大谷義夫先生だ。
のどが衰えると、日本人の死因の上位に位置し、多くの人の命を奪っている「危険な肺炎」を引き起こしやすくなる。
まずは自分ののどの状態をチェックシートで確認してみてほしい。
あなたののどは大丈夫?
「のどの衰え」セルフチェックシート
●食事中にむせやすくなった
●なんでもないときにせき込むことがある
●食べ物や薬が飲み込みづらい
●せき払いが多くなった
●声がかすれることがある
思い当たる項目があるならのどの衰えが進んでいる可能性あり!
「これらの症状に心当たりがある人は、のどの老化が始まっている可能性がとても高いです」(大谷先生、以下同)
のどの衰えから誤嚥や肺炎へ
のどは空気と飲食物が交差する場所だ。空気は気道を通り、飲食物は食道を通るが、加齢などによってのどが衰えると、うまく通らなくなることがある。
「食事をすると、かみ砕いた食べ物はのどの奥へ送られ、ゴックンと飲み込む動作が起きて食道に入ります。このとき、気道の入り口は本来はしっかり閉じるのですが、のどの機能が衰えると隙間ができて、食べた物などが気道に入ってしまうことがあります。これを誤嚥といい、誤嚥によって引き起こされる肺炎を誤嚥性肺炎と呼びます」
食べ物だけでなく、ふだん意識せずに飲み込んでいる唾液も誤嚥することがある。誤嚥性肺炎は、食べ物の誤嚥より、口の中の細菌を含んだ唾液や、さらには逆流した胃液を寝ているときに無意識に誤嚥して起こっていることのほうが多いという。免疫力の低い高齢者に特に多く見られ、死亡率の高い病気だ。
「医学の進歩で、がんや心疾患があっても長く生きられるようになりました。いっぽうで誤嚥性肺炎による死者は医学が進歩しても減っていません。健康長寿を目指すなら、誤嚥性肺炎を防ぐことが重要なのです」