「トイレに行くのがとても憂うつ」と語るのは、幼いころから便秘に悩んでいる牧田智子さん(仮名・56歳)。
「排便する前やトイレでふんばっているときに、すごくお腹が痛むんです。脂汗も吹き出て、頭もクラクラ。便秘で困っているのに、うんちを出すのが怖いんです」
彼女のように激しい腹痛を感じる便秘は“腸の形”に問題があるかもしれない。
多くの日本人がねじれ腸
国立病院機構久里浜医療センター内視鏡部長として、これまで2万人以上の腸を内視鏡で診察してきた水上健先生は、便秘になりやすい腸の形についてこう話す。
「大腸の形と聞くと、解剖図で見るようなきれいな四角形を想像する人が多いでしょう。しかし、日本人の腸の約8割は、複雑にねじれている“ねじれ腸”、そのうち約2割は横行結腸という部分が骨盤の中に落ちて折り重なった“落下腸”を併発している可能性があります。そして、腸が複雑にねじれているほど便秘のリスクも高くなります」
特に大腸の後半部分がねじれていると、水分が少ない硬い便が引っかかってがんこな便秘になる。
「腸のねじれている部分に便がたまると、腸の内圧が上がりお腹の張りや痛みを感じるのが特徴。また、排便時に無理やり便を出そうとして強くふんばるときも腸の内圧が上がるので“迷走神経反射”という状態に陥ります。すると、急激な血圧低下や、めまいを起こして排便が苦痛になります」(水上先生、以下同)
厄介なねじれ腸・落下腸による便秘だが、ねじれを直すことはできるのだろうか。
「ねじれ腸や落下腸は生まれつきなので、改善することはできません。胎児のときにあばら骨あたりを横切る横行結腸の両端が背中にピタッと固定されると、きれいな四角い腸になるのですが、固定が甘かったり、なぜか固定されなかったりすると腸が自由な方向にのびていき、ねじれや落下を招きます。横行結腸が背中に固定されるかどうかは遺伝が関わっています」
また、ねじれ腸・落下腸は女性に多い。
「女性は出産に備えて胎児や羊水の入った子宮を支えるために骨盤の形が横長の楕円形になっていて、骨盤の開口部も広くなっています。女性特有の骨盤の形状も、腸がねじれやすい理由ですね」
【ねじれ腸・落下腸セルフチェック】
(1)子どものころから便秘だった <A>
(2)腹痛を伴う便秘になったことがある <A>
(3)便秘のあと、下痢や軟便になったことがある <A>
(4)運動量が減った途端、便秘になったことがある <A>
(5)運動しても便秘が改善しない <B>
(6)立ち上がると、あおむけのときと比べて下腹がポッコリ出る <B>
●A((1)~(4))のYESが2つ以上→ねじれ腸の可能性大
●Aのねじれ腸の基準を満たし、B((5)(6))のYESが1つ以上→落下腸の可能性大