かぜ薬で頻尿になることも
頻尿の副作用リスクが高い薬には「抗コリン作用」があるものが多い。
「抗コリン作用は、お腹が痛いときなどに胃腸の動きを穏やかにする作用があります。そうすると膀胱の収縮も抑えられ排尿障害が出てしまい、残尿が増え、結果として昼も夜も頻尿になる可能性があります」
抗コリン作用が含まれるのは、胃痛薬や腹痛薬、いわゆるかぜ薬である総合感冒薬、花粉症などの抗アレルギー薬などで、身近な薬に多く、だからこそしっかりチェックしておきたい。中でも総合感冒薬は、尿道が締まってしまう危険があるため、前立腺肥大症がある男性は、飲まないことが推奨されている。
また、統合失調症の薬「クロルプロマジン」など心療内科や精神科で処方される薬には、だいたい抗コリン作用があるので、排尿障害を引き起こす可能性があるという。
「1つの薬だけでなく複数の薬にそれぞれ抗コリン作用がある場合、その合わせ技で排尿障害が起きることがあります。最近懸念されているのは、高齢者がこうした薬を飲むと、認知障害が進むこと。そのため抗コリン作用がある薬は特に高齢者には安易に使わないよう、厚生労働省や日本老年医学会でも注意を促しています」
頻尿の症状は、こうした薬を飲み始めて2、3日のうちに起きるという。ただし、新たな薬ではなくて、以前から服用していた薬でも頻尿になることがあるそうだ。
「抗コリン作用のある薬は便秘にもなりやすいのです。女性の場合であれば、便秘を合併することで頻尿になることがよくあります」
それまで特に症状がなかったのに「便秘+頻尿」になったら、薬の影響も考えるべきだという。
医師に相談を
「もしかして夜間頻尿は薬が原因かも」と思ったら、医師には早めに相談したい。
「受診時に『最近夜中にトイレに起きることがよくあるけれど、飲んでいる薬が影響あるということはありませんか』と聞いてみましょう。
きちんとした医師ならその薬を処方する理由や、副作用の可能性などを説明してくれるでしょう。今後の薬の処方についても配慮してくれます。もし医師が何も対応しなければ、思い切って医師や病院を変えることも検討していいかもしれません」
なるべく影響の出にくい薬に変更したり、飲むタイミングを変えてみたりするほか、同じ薬でも減量すると症状が治まることがある。
「自分で勝手に薬が原因かもと判断して、服用をやめることは厳禁です。糖尿病の薬も高血圧の薬も飲まないと命に関わる場合があるので、勝手な判断でやめずに早めに医師に相談しましょう」
夜間頻尿改善のための市販薬には漢方薬が多いがエビデンスは十分ではないそう。しかし最近では、女性向けには日本初の市販薬が発売された。なお食品ではクランベリージュースに閉経後の女性に対して膀胱炎への予防効果があるという研究発表がある。
「とはいえ、また服用する薬が増えることになるので、まずは薬の見直しが大事です」
夜間頻尿の要因は、もちろん薬だけではない。高血圧や糖尿病などの基礎疾患、腰が曲がって神経を圧迫する腰部脊柱管狭窄症、尿を出す力が低下する低活動膀胱などがあげられる。さらに女性の場合は肥満などさまざまあり、こうした複合的な要因があると、当然だが治りにくい。
「高齢になるほどに排尿トラブルは起こりますから、薬を飲むようになったら副作用の説明を必ずチェックし、体調の変化にも気を配りましょう。夜間頻尿の予防には、散歩や軽い運動をするといいですね。夜間頻尿の一因である足のむくみもとれますし、体重も減り、夜ぐっすり眠れます。生活習慣病や肥満の予防にもつながりますよ」
病気別でわかる 夜間頻尿の副作用のある薬
●高血圧
カルシウム拮抗薬、利尿剤
●糖尿病
SGLT2阻害薬
●花粉症・アレルギー
抗アレルギー薬
●かぜ
総合感冒薬(市販)
●胃痛・腹痛
抗コリン薬(コランチルなど)
●心不全
利尿剤
●うつ病・統合失調症
抗不安薬(クロルプロマジンなど)
〈取材・文/江頭紀子〉