“乗ってみたい!”そう思わせるには
ところが、ベースとなる機種を持つ協力企業を探すも、“壁”にぶつかった。民事再生の適用直後でメーカーとしての実績がないため、提案を受け入れてくれる企業が見つからなかったのだ。
「ようやく相生電子が協力してくれることになり、同社とともに中国の工場を6社ほど回りました。背中の皮が擦りむけるまで試乗を繰り返しながら、ベースとなる機種を絞り込んでいったのです」(裕之氏)
さらに裕之氏は国内の同業者から「業務用として選ばれる条件」「設置運用する中での課題」をヒアリング。これらの意見を取り入れ、ベースの機種に「家庭用機器にない大きなサイズ」「乗ってみたいと感じる豪華なフォルム」や「メンテナンスのしやすさ」などの要素を加え、2012年、業務用に特化した初号機「あんま王」が完成。
「もっとも苦労したのは耐久性です。完成後も利用中に支障が出たポイントを1年半かけて微修正。さらに消耗しやすいパーツを簡単に交換できる設計にし、導入施設のメンテナンス費用を抑えるよう工夫しました」(裕之氏)
その後も「あんま王」シリーズは最新機「あんま王Ⅳ」まで10年間にわたり、業務用に特化した性能を追求。2021年にITコンサルタントの経験を持つ城田充晴氏(以下、充晴氏)が新社長に就任したことで、IoT(インターネットにつなぐことで処理や分析、連携などを可能にすること)の導入にも成功。設置運営や導入する側の負担も大幅に軽減した。
マッサージ機能面では、エアーメカ部分の圧力を細かく調整できるようにし、旧機でマッサージが行き届かなかった部分へのアプローチを追加。
「あんま王Ⅳ」ではフルフェイスシールドを搭載し、プライベート空間を演出。コロナ禍では抗菌・抗ウイルス対策として無光触媒加工を施し、安心して利用できるようにしている。
「マッサージチェアの耐久テストは一般的に1000時間程度のところを『あんま王』は2500時間行い、壊れにくさを実現しています。また修理対応の速さも当社の特長。機械である以上故障は避けられませんが、業務用の場合、故障中=売り上げゼロに直結してしまいますので、翌日か翌々日には復旧する体制を整えています」(充晴氏)
現在、「あんま王」の初号機は廃盤となり、現行モデルは「あんま王Ⅱ」と「あんま王Ⅳ」。そのほか、靴のまま乗ることができるマッサージチェア「快王」は、通常リクライニングすると高さが140㎝になるところを100㎝に抑えられる製品。風営法上、見通しを妨げる設備は設置できないパチンコ店で喜ばれている。腕もみ機能を省いて幅を狭くした「あんま王S」も、コンパクトサイズで狭い場所にも設置でき、喜ばれている。