ホテル側から損害賠償請求をされる可能性も

 被害がひどい場合には電気ケトルの間違った使い方をした宿泊客に対し、次の宿泊客から得られるはずだった宿泊費分を請求したり、部屋の修繕費や損害賠償の支払いを求めることは十分にある。

 旅館やホテル事情に詳しい佐山洸二郎弁護士が説明する。

刑事、民事、両方の対象になります。民事では当該の電気ケトルで普通にお湯を沸かせなくなったり、部屋に異臭がついてしまった場合、宿泊施設側から電気ケトルの弁償代や部屋のクリーニングなどの損害賠償を請求される可能性があります

 さらに佐山弁護士は「そこまで成立した事例はまれだと思います。あくまでも理屈上の話」と前置きをしたうえで刑事罰を受ける可能性も示唆。

通常の用法で使えなくなると、刑法上の器物損壊罪が成立する可能性はあります。それに変な使い方をして異臭を発生させ部屋が使えなくなってしまったり、数日間クリーニングをするため、その期間にほかの宿泊客を受け入れられないことになれば業務妨害罪が成立する可能性もあるとみられます

 たかが電気ケトルの調理くらいで、と思っていると重い罰を受ける可能性もあるのだ。

間違った行為によってホテル側から損害賠償請求をされることのほうが現実的にありうる話なんです」(佐山弁護士)

 さらに危険なのは卓上コンロを持ち込んで自炊をする客。「卓上コンロは火器。一歩間違えれば火災が起きる危険がありますし、煙で客室内のスプリンクラーが作動します」(安達さん。、以下同)

ホテルマンユーチューバー安達さん。がびっくりする宿泊客も……
ホテルマンユーチューバー安達さん。がびっくりする宿泊客も……

 当該の部屋だけでなく、同じフロアは水浸しになる。全館に非常ベルが鳴り響き、避難を呼びかけるアナウンスまでされてパニック状態に。

「営業に関わる損害賠償は当該の宿泊客に請求されます。ちょっと料理をしようと思った、という軽い気持ちでは取り返しがつかないことになるかもしれません」

 ただし、電気ケトルでの調理に限らず突拍子もない行動をする客は多いのだ。

「厄介なのは酔っ払いによる嘔吐です……。ですが室内の場合、よほどひどい状態でない限りホテル側で処理をして請求はされないケースが多いのですが……」

泥酔して粗相をしてしまう女性客もいる。宿泊先での飲酒には注意したいもの ※写真はイメージです
泥酔して粗相をしてしまう女性客もいる。宿泊先での飲酒には注意したいもの ※写真はイメージです

 過去に安達さん。が遭遇したケースは想像を絶した。

部屋で飲酒して、気持ち悪くなって客室内で嘔吐。そのあと、なぜか部屋から出てしまい、廊下やエレベーターホールも汚し、倒れていたんです。周辺はとても見るに堪えない状態……ほかのお客様にとっても不快だし、ホテルもダメージでしかない

 業者を呼んで清掃したというが汚れやにおいはなかなか取れず、すぐには部屋を貸し出すことができなかったそう。