“ひざトラブル”に悩む中高年は少なくない。実際、ある調査(*)では34%の人が「40代以降からひざが痛くなった」と回答しており、大きな悩みの種となっている。
コロナ禍でひざ痛に悩む人が急増
「さらにコロナ禍以降は、首や腰、ひざの痛みを感じる人が1・7倍に増えたともいわれています。外出や運動を控えた悪影響が、今になって表れているようです」
そう話すのは、ひざ関節の痛みに詳しい、さかいクリニックグループ代表の柔道整復師・酒井慎太郎先生。
「ひざが痛む原因と聞くと、ひざ関節の軟骨がすり減ってしまう『変形性膝関節症』をイメージする人が多いかもしれません。しかし最近の研究で、ひざの軟骨には神経がないことがわかり“軟骨のすり減りは痛みの原因ではない”という見方が強まっています。
その代わり、新たに3つのひざ痛の原因が判明したんです。私はそれらを“ひざ痛の3大元凶”と呼んでいます」(酒井先生、以下同)
1つ目の元凶は、ひざ周りにある「膝蓋下脂肪体」の“コブ化”。
「膝蓋下脂肪体とは、ひざのお皿の骨や大腿骨、すねの骨の隙間を埋める脂肪組織です。本来はやわらかなゼリー状をしており、ひざの動きをなめらかにする働きがあります。しかし、この膝蓋下脂肪体がコブのように硬くなると、脂肪部分に神経や血管が増えてしまい、ひざの曲げ伸ばし動作が“刺激”となって痛みを感じるのです。
2つ目は、すねの骨(脛骨粗面)の“ねじれ”。すねの骨が外側にねじれていると、ひざ関節を支える靭帯や半月板などに余計な負荷がかかり、痛みにつながります。また、ひざの安定性や動かしやすさが低下する要因にもなります」
3つ目の元凶は“ひざの曲がり”。中腰やデスクワークなどでひざを曲げていると、太ももの前面にある筋肉や、ひざのお皿をつなぐ腱などの器官が張った状態になる。そうした緊張状態が長時間続くと、ひざ周りが硬くなり、炎症を引き起こして痛みを招くのだ。
「ひざが痛む場合は、3大元凶をすべて発症している傾向があります。どれかひとつではなく、膝蓋下脂肪体、ねじれ、曲がりの3点にアプローチするケアが必要です」
また、ひざ痛に悩む人は、顎を前に出して背中を丸める、いわゆる“悪い姿勢”で生活しているため、首・肩・腰にも痛みを抱えているという共通点も。姿勢の悪さは、全身の痛みにつながるのだ。