経済的困窮を相談できるかかりつけ医を持つ

 では、老後、このような事態に直面しないためには、どうすればよいか。志賀先生は、「病院や制度などの情報を得ることが大切」だとし、備えとして3つの提言をする。

 1つ目は、“かかりつけ医”を持っておくこと。

「自分の健康状態を長期的に見守ってもらうことだけでなく、病気以外のことも気軽に相談できるような関係を築けることが、かかりつけ医を持つメリットです。

 医師と話すのが難しければ、そのクリニックの看護師さんなどスタッフでもいい。自分が“信頼できるな”と思う病院を選べば大丈夫。

 病気を治すのは“薬半分、心半分”。医療だけでなく患者ときちんと向き合ってくれる人的支援がある病院であれば、経済的に困ったときも“こういう制度がある”といった情報をもらえるなど、力になってくれるはず」

 2つ目は、できるだけ費用が抑えられる入院先の目星をつけておくこと。自宅からの距離にとらわれず、郊外の病院にも目を向けることが大切。

「病院によって、アメニティー代や差額室料などはさまざまですが、郊外にある病院は比較的安価。いざ入院が必要になってからでは慌てますから、事前に調べておきましょう」

 調べる際は、インターネットで口コミ等をチェックするのはもちろん、直接電話することも重要。入院に関する相談窓口で入院時に必要な費用、どんな病気であれば受け入れてもらえるか等を確認しておくのがよい。

「スタッフとのやりとりで病院の対応の良しあしもわかるので、より納得して入院できると思います」

 最後は“世帯分離”という奥の手を知っておくこと。同居家族で子どもが親の入院費を支払うことが難しい場合、親と子で世帯分離をして親が生活保護の受給をし、何とか入院できる状態をつくるという事例も増えていると志賀先生は話す。

「はっきり言って、親の入院費を潤沢に出せる子ども世帯は少ない。親子が共倒れにならないためにも、そういう選択があるということを知っておいてほしい。

 夫婦間でも世帯分離が認められる場合があるので、福祉事務所に相談してほしいと思います」

 老後の医療費を確保すべく、加入している終身医療保険はできるだけ保持すること、ローンは60歳までに完済しておくこと、そもそも病気にかからないよう日頃から健康に留意することも大切だ。

「今、どこにでもある普通の家庭が“老後の医療費が払えない”という状態になっています。他人事と思わず、老後にかかる医療費をいかに抑え、どう捻出するかを具体的に考えておくことが安心につながります」