頭蓋骨は動かない! 小顔矯正のウソ
美容系の情報を発信しているインフルエンサーがこぞってやっている小顔矯正にも危険がある。
「施術により皮膚がたるんだり、顎の関節炎、神経麻痺を引き起こす可能性があります。
施術者はその理屈として、『頭蓋骨は小さい板状の骨が合わさってできていて、その骨と骨のつぎ目にわずかな隙間があり、年とともに歪む』と言うそうなのですが、これは真っ赤なウソですよ」
頭蓋骨はどんなに押しても1mmもずれない。
「顔には細かい神経がたくさん張り巡らされています。これを強く押すと、顔面神経麻痺の引き金にも」
だまされると命を落とすニセ医学
もちろん民間療法がすべてニセ医学ということではない。
「東洋医学にはエビデンスがあるものもあります。しかし、東洋医学という言葉を悪用してニセ医学で荒稼ぎしようとする人が多いのも事実」
桑満先生がもっとも許せないというのが、医師がすすめる“疑わしい”医療行為。
「美容効果や疲労回復目的で『〇〇注射』をすすめられたら注意してください。これらには信用できるエビデンスがないことが多い。ですが、あたかも必ず効果が出るかのように言います。
さらに、注射を打つ頻度や体質によっては身体の機能を低下させるおそれがあります。鵜呑みにするのではなく本当に必要かどうかを考えましょう」
また、「天然は身体に良くて合成は悪い」といったイメージに縛られた自然派信奉者が走りやすいタイプのニセ医療もある。
「SNSでもよく目にするのが、生の酵素を食べて寿命を延ばすという『酵素栄養学』、病気や症状を起こす可能性のある薬を投与して自己治癒力を活性化させる『ホメオパシー』ですね。
ホメオパシーでは新生児の死亡事故もあります。にもかかわらず、これらの治療法をすすめる医師は、誰でも効く、何でも治る治療法かのように説明するのです」
危険性はその治療自体によるものだけではない。
「いちばんの問題は意味のない治療を受けることで、お金や時間を失うだけでなく、ちゃんとした治療を受ける機会を失ってしまうこと。本来治るはずの病気で命を落とすことだってあるのです」
桑満先生のもとを訪れた患者さんの中にも、かつてニセ医学にだまされた人がいる。
「当時50歳くらいの女性が、腹痛がひどく、ある治療院に行ったんです。すると『切腹した先祖の霊がついている』と言われました。
その霊を祓うために5年間その治療院に通い続けました。しかし、一向によくならないと僕の病院に来てくれたんです。
調べてみると腸と卵巣が癒着していて、危険な状態でした。もし気づくのがもう少し遅くなっていれば間に合わなかったかもしれません」