デング熱のときのようにウイルス感染にも注意

 蚊との闘いは避けて通れず、ゆえに蚊にまつわる都市伝説は数多い。にんにく、香水、ファンデーションを嫌がる──などなど、さまざまな説が囁かれてきたが、はたして真意のほどはどうなのだろう。

「にんにくについては根拠がなく、何を食べても結局のところ蚊対策としての効果はありません。気をつけたいのが炭酸飲料で、二酸化炭素が多く発生するので蚊を誘引することに。香水をたっぷりつけたからといって蚊を寄せつけないことはなく、ファンデーションを厚く塗った程度では蚊はめげずに刺しますね」

 かゆく不快なだけでなく、蚊に刺されることが感染症の原因になることも。事実、2014年夏にデング熱が代々木公園を中心に都内で発生し、世間を大きく騒がせた。あれから10年近くがたち、騒動の記憶は薄れつつあるが、感染症の危険は今なお見過ごせないと注意を促す。

「今年の夏は海外からの旅行者も増えるでしょうし、そこからウイルスが入ってくる可能性もある。デング熱のときのようにウイルスを持つ人がやってきて、その人の血を吸った蚊がまた別の人を刺して、という感染の仕方もあるので注意が必要です。ただどの蚊がウイルスを持っているかというのはわからないので、やはり刺されないことが大切」

 まずは正しい知識を身につけること、しっかり対策を講じること。蚊の研究歴30年、白井先生に自身の蚊対策を紹介してもらった。

「長袖、長ズボン、運動靴は基本で、短時間ならビニール手袋をはめ、肌が露出する部分には虫よけを塗っています。サマーマフラーをつけたいところですが、真夏は暑くてなかなか難しい。あとはハンディーファンやうちわを使って風を送っていると刺されにくい」

 それでも刺されてしまったときの対処法とは?

「かゆみ止めに効果のあるリドカインなどが入っている薬を塗ること、それがなければ冷やすこと。より効果的で新しいやり方があればいいのですが、やはり伝統的な方法が一番ですね」

 時代が変わり、文明がいくら進化しようとも、どうやら蚊のたくましさは変わらぬまま。蚊との闘いはこの夏も続きそう……。

※画像はイメージです
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白井良和(しらい・よしかず)●害虫防除技術研究所代表、有限会社モストップ取締役。医学博士。ゴキブリなどの害虫対策商品販売、蚊忌避剤や蚊捕獲器の効果確認試験ほかゴキブリ、ユスリカなどの害虫試験、書籍の出版、テレビ・ラジオ等のメディア協力、YouTube動画配信、Web記事の監修などを行っている

(取材・文/小野寺悦子)