ジェネリック医薬品メーカーの不正も問題に

 そして「新とジェネリック医品は、どちらを選ぶべきか?」という問いには「わからない」と答えるほかない、と岡田先生。

「私自身、医品に関する研究や科学的検証に長年取り組んでいますが、答えは出せていません。ジェネリック医品関連の論文も国内外問わず目を通してきましたが、追跡調査が短期間で終了しているものや、対象者数が極端に少ない論文もあり、玉石混交。医師自身も判断ができないため、患者さんに選択を委ねているのが、医療現場の実情なのです」

 一般人はもちろん、剤師や医師でさえも、ジェネリック医品が抱えるリスクを把握できない状況にあるようだ。なぜ、そのような事態に陥っているのだろうか?

「原因のひとつとして考えられるのは、の価格の安さです。の価格は『価』と呼ばれ、新、ジェネリック医品共に、2年に一度のタイミングで国が価格を改定します。価は流通がスタートした時期がもっとも高く、年を経るごとに価格が引き下げられていく仕組みです。同じ効果が得られるでも1錠140円のもあれば、1錠6円のもあり、その値段は科学的根拠の有無や安全性に基づくものでなく、時間の経過によって決められているのです。長く服用されてきてエビデンスが蓄積されているはずののほうが安くなるので、メーカーが利益を追求するほど、そうしたは流通しにくくなります」

 メーカーにとって、安いは輸送費などがかさむため、作れば作るほど赤字になってしまう。製会社は、企業同士の競争ではなく、国の方針によって窮地に立たされているのだ。

 そして、こうした状況が、ジェネリック医品メーカーの不祥事を招いている、と岡田先生。直近では、2020年末にジェネリック医品メーカー・小林化工が製造していた水虫の治療に、含まれるはずのない“睡眠導入剤”の成分が混入していた。このを服用した245人の患者に強い眠気や、意識消失などの健康被害が報告され、同社には業務停止と改善の命令が下された。

「今、日本の厚生労働省が承認しているジェネリック医品は9054品目あります。もちろん、承認に必要な要件を満たしたうえで製造販売しているはずですが、なかには品質検査を行わずに結果を捏造したデータを申請に使ったり、国に承認されていない添加物を使用したりといった“不正”を行う製会社が一定数存在しているのも事実です」

 こうした不正をなくすには、ジェネリック医品の価格を上げる必要があるだろう、と岡田先生は話す。

「ジェネリック医品すべてが粗悪なわけではなく、なかには優れたもあるはずです。しかし、先述のとおり、種類が9000超もあるので、それらを一つひとつ調べていくのは不可能。ジェネリック医品が抱えている課題が解決されない限り、安心して服用するのは難しいですよね」

 信頼に足る根拠がないことが、岡田先生がジェネリック医品をのまない理由なのだ。