家事は労働じゃない?労基法の落とし穴
国から労災認定が下りず、7年にもわたって裁判が続いている例をひとつ紹介しよう。
当時68歳の女性が、寝たきりの高齢者のいる家に1週間泊まり込み、24時間にわたって介護や家事をした。そして仕事が終わった翌日、低温サウナで意識を失い亡くなった。夫は過労死の労災認定を求めたが、労働基準監督署はこれを認めなかったため裁判を起こした。
24時間拘束されて1週間働き続けるという過酷な労働状況だったのにもかかわらず、なぜ認定は下りなかったのか。
それは、労働基準法は「家事使用人には適用しない」と明記されているからだ。たとえ他人の家庭の家事を請け負ったとしても、家庭の中の家事労働は対象とならない。
それでは家事代行サービスで働く場合はどうなのだろう。
「会社に雇われて各家庭に派遣される場合は労基法で守られますが、各家庭から直接個人が請け負った場合は守られない。
また、家事代行業者が入っていたとしても、実は雇い主にはなっていなくて、個人同士の委託契約だったという場合もある。働く際は注意する必要があります」
家事は人の暮らしになくてはならないものであり、スキルも必要な立派な労働だ。高齢の女性が働きやすい職種でもあるのに、こうした不利益がまかり通っているのだ。
「働けるだけいい、と思って自らは声を上げにくいのが高齢者。周りの人や家族が注意して、少しでも無理や危険の兆候が感じられたら助けに入ってあげてください。自分たちだけでは対応が難しい場合は、私たちのようなユニオンに相談するのも手です」
命のために働いて命を失ってしまっては本末転倒。命だけは取り戻すことができないのだから。
池田一慶●業務が原因のケガや病気の相談窓口「労災ユニオン」の代表。
【労災ユニオン問い合わせ先】03-6804-7650(平日17~21時/日祝13~17時受け付け、水土休み)
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(取材・文/野沢恭恵)