続いて、リスクを下げると考えられるのが、ビタミンC。

「2020年、ビタミンCの摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループに比べて発症リスクが14%減少したという論文が出ています」

 さらに、再発リスクは19%低下、死亡リスクは22%低下するという結果から、ビタミンCの摂取が乳がんに大きく作用することがわかっている。

「ただし、これは食べ物から摂取した場合の結果で、サプリからの摂取では発症リスクの低下は見られませんでした。ビタミンCは、野菜や果物、いも類に多く含まれるので、サプリに頼るのではなく、これらの食材を積極的にとることをおすすめします」

 牛乳やナッツ、野菜、いも類など、意外な食べ物が持つ乳がんのリスクを下げる効果。適量を継続的にとることで、効果が期待できるはずだ。

乳がんリスクになる危険な生活習慣

 何げない日々の暮らしの中に、乳がんのリスクが上がってしまう危険な生活習慣もある。

「まず、見直してほしいのが睡眠時間です。長すぎても短すぎても不規則でも、乳がんの発症リスクが高くなってしまうので注意が必要です」

 理想的な睡眠時間は6~9時間だが、それよりも長い人は乳がんの発症リスクが22%増加。これは、体内にさまざまな炎症を引き起こす物質が血液中に増えることで、がんの成長を促してしまうことが原因だとされる。

 一方、睡眠時間が6時間未満のグループは、7時間以上のグループに比べて乳がんの発症リスクが60%高くなるという研究結果も出ている。これは、睡眠中に分泌される抗がん作用のあるホルモン、メラトニンの分泌時間が短くなるためではないかと考えられている。

 夜勤や交代制勤務などで夜起きて仕事をし、睡眠が不規則になりがちな人も乳がんのリスクが高まることから、乳がんと睡眠は密接に関連していると考えられる。睡眠は規則的に、毎日7~8時間とることを心がけたい。

 何げなくとっている食品にも、乳がんリスクを上げるものがある。先に紹介したナッツや魚などに含まれているのは不飽和脂肪酸だが、バターやラード、ヤシ油やパーム油などに含まれるのは飽和脂肪酸。フランスで約4万人を対象に行われた調査では、飽和脂肪酸の摂取が、乳がんのリスクを98%も高めるという結果が出ている。

 近年の研究では、飽和脂肪酸の5%を、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸に置き換えると、がんによる死亡リスクが11%低下すると推測されている。できるだけ、植物性の良質な油をとるように心がけ、リスクを避けよう。