閉経後は一気に心臓病のリスク増

 いざというときの対応も重要だが、何より発症を防ぎたいもの。その予防対策についても男女で差がある。特に女性が気をつけなくてはいけないのが「閉経後」だ。

心筋梗塞が多く発症する年齢は、男性は55~60歳、女性は65~70歳で、女性は10年も遅くなっています。これは女性ホルモンが血管を柔軟に保つことによって、心筋梗塞の最大のリスク要因である動脈硬化を防いでくれていたためです。

 ところがその恩恵が失われる閉経後に、『これまで大丈夫だったから』と同じ生活を続けていると、女性も動脈硬化を、さらには心筋梗塞を起こすリスクが高まってしまう心配があります」

 男性より10年遅れるとはいえ、やがて訪れる“オンナの心筋梗塞年齢”に備えて食事や運動などの生活習慣を見直す必要があるというわけだ。

「2010年には、心疾患の男女差を踏まえて『循環器領域における性差医療に関するガイドライン』が作成されました。ところが実際には医療や救急体制に広く浸透しているとはいえないのが現状です。

 医療従事者に加えて、広く一般の方にも女性特有の症状を知っていただく必要性を痛感しています。女性はもちろん、男性も知識を持って、いざというときの判断に役立てていただきたいと思います」

安田聡先生●東北大学病院循環器内科教授。循環器疾患の性差医療ガイドラインの作成にも携わる。
安田聡先生●東北大学病院循環器内科教授。循環器疾患の性差医療ガイドラインの作成にも携わる。
【表】心筋梗塞で発症から30日以内に死亡する割合は“女性”が男性の2倍多い
教えてくれた人……安田 聡先生●東北大学病院循環器内科教授。循環器疾患の性差医療ガイドラインの作成にも携わる。