がんの生存率は上昇傾向にあり、「治る時代になる」ともいわれるほどになった。
ところが、腫瘍内科医として多くのがん患者に接してきた井岡達也先生は、その一方で「治療がうまくいかない人も増えた」と言う。
「がんと告知されると、冷静ではいられない中で、病院や治療法など次々と重要な選択を迫られます。治療の選択肢や情報が増えた今、よりよい選択をするには、患者になる前から、がんに対する心構えを知っておくことが大事なのです」(井岡先生、以下同)
後々「こんなはずではなかった」と悔やまないために、実際にあったNG行動をもとに“うまくいく人”と“いかない人”の違いを紹介する。
医師の説明に家族が付き添わない
50代女性・Aさんは卵巣がん告知の際は夫が付き添ったが、その後の手術や抗がん剤治療など治療方針の説明はAさんのみで受けていた。医師が家族の来院を促しても「仕事が忙しくて行けない」と言うばかり。
その後容体が悪化し、慌てて夫や息子が来院するが、受けてきた治療やその副作用など、これまでの経緯がわからず家族も混乱してしまった。
▼井岡先生から
「医師との面談で、患者さんだけでなく、患者さんを支える家族も一緒に医師と話をすることは、よりよい治療を考えるために何より大切です。
検査結果をどう判断するか、治療の選択肢のメリット・デメリットなど医療的な話はどうしても複雑になるので、患者本人だけでは理解しきれていないことも。ましてや理解力が低下しがちな高齢の親ががんになった場合には、子世代のフォローが必要です。
また患者さんが『家族に心配させたくない』と遠慮したり、家族が『忙しいから』と来ないのは避けたい典型例。
順調であれば通院に毎回付き添わなくてもよいですが、がん治療は『手術したら終わり』ではなく、薬の副作用や手術の後遺症など患者さんの状況に合わせてその都度治療を考えなくてはいけません。医師から『家族と来て』と言われたら何をおいても予定を調整してください」