「あと少しだけ」と毎日祈っている
つらい出来事や感情をのみ込んで真摯(しんし)に介護に取り組んでいる――。大崎さんのエピソードからはそんな介護者の姿が浮かび上がってくる。
「何かに突き動かされて、頑張って動いているのではなく、目の前に親が生きていてサポートが必要になってきたので、私ができることをただ自然にやっているだけなんです。
父も母も親思いで、いつも親を大切にしていました。その姿がまるっと私の人生にインプットされているので、それが私の介護観につながっているのかもしれません」
母親は一時期危篤状態から復活したが両親は共に、現在も入院中だ。
「父は昨年12月に体調が急変し、入院をせずにいったんは落ち着きました。でも、年明けに悪化して救急搬送され、いまだ入院中です。もともと骨髄異形成症候群で極度の貧血のところに肺炎となり、本来ウイルスと闘うための白血球の数値が低いのでなかなか肺炎に勝てない状態です」
呼吸が止まらぬように、つきっきりで酸素飽和度と呼吸状態を見て、息苦しさがひどくなったら痰(たん)の吸引。毎日朝から夜まで父親の病室につきっきりで、母親の面会にも行けない状態が続いている。
昨年5月から半年の期限付きで療養型病院に入院中の母親の退院も延期となった。
「ひとりで2人の介護は厳しいだろうから父親が落ち着くまで延期させるという病院側の配慮です。中心静脈栄養で命をつないでいる母はやはり弱ってきており、滑舌もさらに悪くなりましたが、面会に行くと一緒に歌を歌います」
介護の知識の重要性を認識し、介護福祉士の資格も取得した大崎さんだが、両親には「感謝しかない」と話す。
「親が死ぬ姿をじっくりと見せて旅立ってくれることで、残された側の人生が豊かになるのは間違いないと思うんです。
ただ、今も苦しそうに目も開けられずベッドでただ息をしている父を見ると、『長丁場にさせてごめん』という思いになります。毎日病室を出る時、『あともう1日だけ』『あと少しだけ』と祈る思いでいます」