“うつ”というと、いわゆる五月病の季節や、日照時間の減る晩秋~冬にかけて増える印象だが、実は夏も、うつになりやすい。特にシニアには要注意な季節だ。
「夏になると寝苦しい夜が続きますが、実は暑さによる睡眠不足や食欲不振などは、高齢者のうつ、いわゆる“老人性うつ(老後うつ)”の誘因になることがわかっています」
こう話すのは、精神科医で、保坂サイコオンコロジー・クリニックの保坂隆院長。先生のクリニックには、日々、うつの症状を訴えるシニアが訪れる。超高齢化が進む日本では、シニア人口の割合が増えるにしたがって、「老人性うつ」が急増しているという。
「高齢者は自律神経の働きが鈍って、暑さ・寒さを感じにくくなりがち。本人は気づいていなくても、さまざまなストレスを受けていることもあります。夏は特に、室内温度の調節や、バランスのとれた食事、水分補給に注意して、不眠や食欲不振に備えてください」(保坂先生、以下同)
年を取るとストレス耐性が低くなる
高齢化によって急増しているという「老後うつ」。そもそも、シニアがうつに陥る原因とは?
「うつは年齢に関係なく、心身へのストレスが原因で発症しますが、シニアの場合だと、例えば定年で会社を離れたり、配偶者と死別したり、子どもが独立したりして、喪失感をきっかけにうつになりやすいのです。
最近はひとり暮らしの高齢者数が多くなり、うつ症状を訴える方が急増しているようです」
「好々爺(こうこうや)」などという表現があるように、年齢を重ねると性格も柔和になると想像しがちだが、一方でキレる老人のニュースなども耳にする。実際はどうなのだろう。
「もとの性格にもよりますが、シニアになるとストレスへの耐性は低くなります。これは、感情のコントロールをつかさどる脳の活動が弱まるから。
こうなると、他人を理解したり、相手とコミュニケーションを取り合ったりするのが面倒になってきます。そのため、思いどおりにいかないことが増えて、大きなストレスを感じるようになるのです」