目次
Page 1
ー 1.自分の存在価値を認める
Page 2
ー 2.あきらめない気持ちを持つ
Page 3
ー 3.喜びの中に生きる
Page 4
ー 5.治療法を自分で決める
Page 5
ー 7.治療後の自分の姿をイメージする

「500人近くのがん克服者の話を伺い、これまでの価値観を根底から覆すような“心の変容”や“生き方の変化”が起こったとき、現代では治療が困難とされる状況から奇跡的に回復していたんです」

 そう語るのは命のマガジン『メッセンジャー』編集長の杉浦貴之さん(53)だ。がん生還者たちの取材を行っており、杉浦さん自身も1999年に腎臓の希少がんに罹患(りかん)。

 当時、2年後の生存率は0%と診断を受けるも、左腎臓摘出手術と抗がん剤治療を続け見事に回復。25年たった今も再発していない。つらい闘病中、がんを克服した患者の存在が大きな励みになったことから、雑誌を発行し、イベントや講演活動も続ける。

「私の見解ですが、抗がん剤や代替療法など治療は人それぞれでも、共通した思考パターンや信念があると感じました。それでがんが治るということではありませんが、病気と向き合うヒントになればと思います」

1.自分の存在価値を認める

「私ががんと診断されたとき、一番励みになったのは、母からの“生きていてくれるだけでうれしいよ”という言葉。それまではいい会社で働く自慢の息子でなければ愛されないと思い、寝る間も惜しみ仕事に没頭していました。ストレスで暴飲暴食、寝不足の日々。

 そうした生活が病気の原因というわけではなく、その根底にあった、自分には価値がないという自己不全感が身体の調子を停滞させ、ネガティブな状況をつくったのかもと感じます。母の言葉でどんな自分でも価値はあると気づいたのです

 杉浦さんは手術の後遺症によって、5度の腸閉塞にも苦しんだ。しかしこのときも今の自分を受け入れ、焦らず生きることを決めたという。

「体調が戻らないと、病気の自分は迷惑な存在だとか、早く社会復帰して役に立ちたいと無理してしまうんです。でも焦りや自己否定をやめたんです。そのおかげなのか、今は心身共に健康です」