健康寿命が長くなり、高齢者でも新しいことへのチャレンジが可能に。しかし、体力や時間的余裕を過信して、いざやってみると失敗……。医師の平松類先生とお金のプロ・越原市美さんに、年を重ねてからは“あえてやらないほうがいい”ことを聞いた。
1.スマホで動画視聴
「スマホの見すぎで典型的な疾患が緑内障。近視が進み、それによって緑内障が起きやすくなる」と言うのは、二本松眼科病院副院長で高齢者問題に詳しい平松類先生。
NetflixにYouTubeの視聴と、当たり前にスマホを使いこなす昨今の高齢者。娯楽が増えるのはいいが、目に悪影響を及ぼすことがあると指摘する。
「緑内障のほかによくあるのはドライアイで、これはホルモンの関係などで特に女性に多くなっています。スマホの見すぎは眼精疲労にもつながりやすい。疲れ目と違って眼精疲労までいくとこり固まって数日休んだ程度では治らない。頭痛や肩こりを引き起こすこともあります」
と平松先生。これらはスマホの普及後、とりわけコロナ禍の影響で近年増加した現象だと語る。しかし動画を見るなと禁止するのはなかなか酷なもの。
「一番の問題は距離。目に近いほど負担がかかりやすい。スマホは目から約20cmと近く、本やタブレットで約30~40cm、パソコンで50cm前後、テレビは1m以上といわれています。動画を見るならスマホではなく、テレビで見るほうがよいでしょう」
2.不慣れな道の運転
高齢者の事故率が高いのは周知の事実。そこには確かな裏付けがある、と平松先生。
「高齢になると判断能力や反射スピードが衰える。有効視野が狭くなり、これが最も事故率に影響するといわれています」
正面を向いた状態で注意できる範囲が有効視野。例えば前を見て運転していて、横から子どもが飛び出してきたときとっさに対応できる範囲を指す。
「通常でも有効視野の範囲は約20~30度。環境によっても有効視野は変わります。例えば不慣れな道で緊張していたり、時間に追われて焦っていたりすると狭くなる」
免許返納という手もあるが、なかには高齢で危険だからという周りのすすめに耳を貸さない人も。
「これには高齢者ならではの特性があって、高齢者は大体年齢を2割引きで考える。例えば60歳だと48歳、70歳なら56歳の気持ちでいる。だから本人としては、まだ運転をやめる必要はないよね、となる。
もし高齢者が運転するなら、遠方や不慣れな道は避けるようにして。有効視野の広がる慣れた道で運転することをおすすめします」