股関節やひざの痛みも石灰が原因かも!?

 病院でステロイド注射を打ってもらったA子さんも、直後からみるみる痛みが軽くなり、数日後にはほぼ全快。いまでは難なく腕を回せて、日課のラジオ体操もラクにできるようになった。

「こんなに簡単に治るなら、もっと早く病院へ行けばよかった」と、反省しているそう。

石灰は1度溶け出して身体に吸収されてしまえば、再発することはほとんどありません。ですが、完全に吸収されずに残っていると、それが溶け出せばまた炎症を起こし、痛くなる可能性があります

 完全に安心とはいかないが、すでに経験があるぶん、同じ状況に陥っても早めに通院するなど、冷静に対処できそうだ。また、石灰は肩以外の部位にもたまることがあるという。

肩の次にたまりやすいのが股関節です。太ももの外側に出っ張った骨の近くにできるのですが、股関節を動かすと痛いので、歩いたり、あぐらをかいてもツラい。そのほかにも、ひざやアキレス腱など、さまざまな場所に発生することがあります

 石灰をたまりにくくするためには、生活習慣が大切。

肩の場合は腱板を変性させないために、普段から肩を動かして肩の可動域を維持しましょう。食事の面では、糖尿病が関連していることは、はっきりしているので、糖質のとりすぎに注意を。

 また、女性ホルモンの減少による自律神経の乱れを整えるためにも、バランスのいい食事を3食とるなど、一般的にいいといわれていることがこの疾患にも重要です」

 いつまでも五十肩が治らない……そう思っている人の中には、石灰が原因という人も一定数いる。原因がわかれば治療もすぐにできて、完治も難しくはない。早めに痛みとおさらばするには受診が近道なのだ。

牧原武史先生●独立行政法人国立病院機構霞ヶ浦医療センター整形外科所属。肩関節外科が専門。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
牧原武史先生●独立行政法人国立病院機構霞ヶ浦医療センター整形外科所属。肩関節外科が専門。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
【写真】骨の上に石灰がたまっている様子を撮影したレントゲン

教えてくれたのは……牧原武史先生●独立行政法人 国立病院機構 霞ヶ浦医療センター 整形外科所属。肩関節外科が専門。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。


取材・文/荒木睦美