アルコール依存症患者数は、推計で約109万人とされている。また、ギャンブル依存症が疑われる人は、約300万人を超えるとも。さらには、ネット依存やホストへの依存など現代社会ならではの依存も。身の回りに依存しやすいものが、確実に増えている──。
益田 とても危機感を感じています。ビジネス的な戦略を含め、依存させるような仕組みが増えています。個人で対抗するには限界があると思っていて、国や行政のサポートが必要になってくるでしょうし、僕らを含めた専門医やメディアも警鐘を鳴らしていかないといけない。
山下 依存することは決して悪いことではありませんが、いい依存と悪い依存があります。仕事に一生懸命になる。これだって仕事に依存している状態ですよね。ただし、自分の幸福度が上がらないような依存は改めなければいけない。
対人関係が崩れ、社会から見放されるような依存は幸せにつながらない。いい依存と悪い依存を伝えていくことも大事だと思います。そして、たとえ精神の病気になったとしても、動画や書籍から専門知識を学ぶことで、必ず回復に向かえることも伝えていきたいですね。
対談してくれたのは……
山下悠毅(やました・ゆうき)●ライフサポートクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医、指導医。日本外来精神医療学会理事。「お薬だけに頼らない精神科医療」をモットーに、専門医による集団カウンセリングや極真空手を用いた運動療法などを実施している。大学時代より始めた極真空手では全日本選手権に7回出場。2007年に開催された北米選手権では日本代表として出場し優勝。
益田裕介(ますだ・ゆうすけ)●早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医、指導医。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数63万人を超える。患者同士がオンライン上で会話や相談ができるオンライン自助会を主催・運営するほか、精神科領域のユーチューバーを集めた勉強会なども行う。
対談されたおふたりの著書
『依存症の人が「変わる」接し方』山下悠毅 著 (主婦と生活社 税込み1760円)
依存症の克服には、専門機関の力が必要ですが、患者の周囲の人が依存症の本質を捉え、彼らが「見ている世界」を理解し、本人が治療に向かうよう付き合い方を変えることも大事。そのハウツーと幸せのつくり方を教える一冊。
『まんが 夜のこころの診療所 精神科医がいるスナック』益田裕介 著/青山ゆずこ マンガ(扶桑社 税込み1760円)
チャンネル登録者数63万人超「精神科医がこころの病気を解説するCh」発の新感覚コミック。心に傷を負い、うつうつとした思いを抱えた人たちに優しく寄り添うように、益田先生が解説していく。
取材・文/我妻弘崇