中高年の貧血には病気が隠れていることも

 貧血の多くは、鉄不足による鉄欠乏性貧血が原因と考えられる。女性の場合、月経による出血や、妊娠・授乳による鉄不足が起こりやすいため、若い世代を中心とした病気と思われやすい。しかし、更年期を過ぎた世代や高齢者でも貧血は多発している。

「加齢は身体全体のパフォーマンスを落としますが、血液を作る力も落としてしまいます。そして中高年で何よりも大きいのが食生活の変化です」と秋津先生。

「鉄分をいちばん多く含んでいる食品は肉ですが、50代や60代になると、若いころのようには食べられない。年齢的に味覚も変わるので、焼き肉よりはアジフライがいい、というように鉄分を含む食品の摂取量自体が減ることが大きいと考えられます」

 さらに、貧血が別の病気の症状のひとつであることも。

「閉経前の女性では、子宮筋腫による月経過多などがあります。また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のように、消化管から出血する病気も原因になります。がんの好発年齢が中年以降のため、がんによる貧血の可能性も高まります」

 国立がん研究センターによると、がん患者の半数は貧血を示しているというが、がんと貧血にはどんな関係があるのだろうか。

「胃がんや十二指腸がん、食道がんなどの出血するタイプのがんは貧血を招きます。血液を作る骨髄にがんが転移したりすることでも、血を作る力が落ちるといわれます。

 次に、“悪液質”といって、がんになるとなぜか倦怠感が出たり食欲不振になって、体力が落ちて痩せていきます。悪液質による身体の衰弱や、抗がん剤の影響で貧血になったり、治療による食欲不振などが重なり鉄分の摂取量が減ることも原因になります」

 貧血の陰には重大な病気が潜んでいる可能性があるため、貧血を見つけることが別の病気の発見につながることも。ほかにも、造血細胞の病気である白血病関係の病気や、赤血球だけが壊れる溶結性の貧血などもある。

 症状自体は同じでも重い病気の前兆の場合もあるので、“たかが貧血”と軽く見るのは禁物だ。

 また、貧血が別の病気のリスクを高めることもある。

貧血で脳などの大事なところに十分な酸素が届かないと、より多くの血液を送るために心臓は必要以上にムチを打って働き、結果、心臓の負担が増して心不全や心筋梗塞といった、命に関わる病気を引き起こすことがあります