加齢とともに、体力や気力が低下。以前よりも、片づけや家事へのやる気がダダ下がり、という人も多いのでは?「暮らし方を見直すチャンス。自分をもっとラクにしてあげて」そう話すのは一級建築士、田中ナオミさん。「きれいよりも便利さ」「時短は目的ではなく結果」―。自身が実践してきたノウハウを伺った。
収納は「その場しのぎの“きれい”」
「片づけと聞くと、収納だけに目がいきがちですが、そうなるとその場しのぎの“きれい”にしか、なりません。本来、片づけの目的は見栄えのためではなく、そこに暮らす人のために行うもの。“使えるように整える”ためのひとつの手段なのです」
と話すのは、40年間、個人住宅を手がけてきた住宅設計者であり、「生活を楽しむこと」がモットーの一級建築士、田中ナオミさん。
「家をきれいにすることだけに自分のタガをはめてしまうと苦しくなり、ストレスがたまります。目先のきれいではなく使いやすく整えると、きれいの思考が変わって、ラクになるかもしれません」
![田中さん宅の台所下 撮影/鈴木真貴](https://jprime.ismcdn.jp/mwimgs/f/f/350mw/img_ff4cabc83133308d201e498e597fab8d1729707.jpg)
田中さんによると、「片づく住まい」には、下の囲みのようにいくつかの条件があるそう。
「片づく住まいを考える際に、見直さなければならないのが収納。収納は、物量・ものの居場所・配置・収納の仕方の順に組み立てていきますが、やみくもに変えても暮らしにマッチしなければ片づく住まいにはなりません。
まずは、暮らしのなかのミスマッチ、『◯◯しにくい、面倒、苦手』なことを書き出して、なぜそうなのかを解消するように見直しましょう」
鍋の出し入れが面倒な場合は鍋の配置と置き方を変更。掃除がしにくいと感じたら、出しっ放しのものを減らす、といった具合だ。
「食器はキッチン、バスタオルは脱衣室、洋服は寝室など、収納の極意は『適材適所』です。使いたいものを使いたい場所に置くことは、当たり前のようで実はあまりできていません」
例えば、入浴時に必要なアイテム。
「いちばんスムーズなのは、パジャマ、下着などの入浴後の着替え一式とバスタオルを脱衣室にまとめること。1か所に収納しておけば、入浴前の準備と洗濯後の片づけが一度に済んで、無駄な動きをなくせます。ものは使う場所で出し入れが完結するのが理想。特に毎日使うものは定位置を決め、家族で共有するのが必須です」