2023年11月末、ハナ子さんは人生の大部分を過ごした北海道の生活を手放し、新たな東京生活がスタートする。
インスタでの発信を始めたきっかけ
引っ越しする前から、SNSについて改めて学び直そうとスクールに入ったハナ子さん。
「入会相談の際、カウンセラーに“60代だけど東京に引っ越してひとり暮らしをしようと思っている”と言うと、“そんな冒険考えている人なんてひとりもいない。だからこそインスタではそれを発信したらいい”とすすめられました」

離婚、そして北海道の実家じまいをして、現在は東京の1LDKで暮らしているハナ子さん「昨年亡くなった父、享年90。投稿にもあたたかいコメントが数多く寄せられていた」(本人インスタグラムより)
ところが投稿してもフォローしてくれたのは、“おすすめに出てきたから”というわずか数人。それでも「私に興味を持ってくれてのフォローですから本当にうれしかった」と話す。そして転機は一昨年末、突如としてきた。
「引っ越してからちょうど1か月がたったころです。編集しなくちゃと思いつつも、思い出すとつらくて編集するのに時間がかかりました。実家の掃除の様子や飛行機から眺めた札幌の夜景まで、撮りためていた映像を『バイバイ北海道』と文字を入れてインスタグラムにアップしたんです」
すると思いがけないことが起こった。
「朝起きたら、フォローして応援してくれる方が前日の15人から3000人に。更新するたびに数千人ずつ増えていったんです」
ちなみに現時点で動画は766万再生を記録している。さまざまなことを手放した後にやってきた、まさに奇跡のような出来事だったと話す。今では東京で共にランチを楽しむ仲間もでき、娘さんとのおだやかな毎日が続いている。
「新しい暮らしを始めて1年以上たちました。全部を手放して再出発した私は、どうやら多くの素晴らしいものを得ることができたようです」
と微笑む。まずは恐れず、思い切って一歩前に踏み出すことが、大切なのかもしれない。
取材・文/千羽ひとみ