最近よく耳にする遺伝性乳がんとは

 女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がんの予防のため、両乳房の切除手術を受けたことで注目された遺伝性乳がん。日本人でも、乳がん全体の5~10%が、このタイプに該当するといわれています。

 遺伝性の乳がんの代表が、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」です。少し難しい専門用語を使いますが、HBOCは「BRCA1」「BRCA2」という2つの遺伝子の病的な変異によって、生涯乳がんになる確率が最大で85%程度、卵巣がんになる確率が60%程度まで高くなる病気です。

 アンジェリーナ・ジョリーさんの場合、「BRCA1」遺伝子の変異があり、生涯乳がんにかかる確率が80%以上と高く、予防が必要でした。しかし、もしこれが20%ならどうでしょう。予防的手術より、検診を欠かさないことを選択するかもしれません。

 このように、乳がんにかかりやすい遺伝子を持っていても、リスクは人それぞれ。

 自分が遺伝性乳がんに該当するかも、と不安になったら、まず遺伝カウンセリングを受ける手段もあります。実際に遺伝子検査を受けるかどうか、予防的治療に進むメリット・デメリットを含め、ベストの選択を一緒に考えてくれます。このような手段があることも、頭の片隅に残しておいてください。

《プロフィール》

◎戸﨑光宏医師
放射線科医師。相良病院附属ブレストセンター・放射線科部長/さがらウィメンズヘルスケアグループ・乳腺科部長。東京慈恵会医科大学放射線科、亀田京橋クリニック画像センター長ほかを経て現職。日本乳癌学会診療ガイドライン作成委員。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク理事長。乳腺画像診断の世界的権威。