ichigo0520

 今年1月、イギリスの科学雑誌『ネイチャー』に衝撃的な論文が掲載された。米国スタンフォード大学の研究によると、女性が食物繊維の少ない食事をしていると、子どもの腸内環境が悪くなり、孫では悪玉菌ゴッソリの“最悪の腸”になり、そのまま、ひ孫にまで受け継がれるという。

 食物繊維に詳しい大妻女子大学家政学部食物学科教授、青江誠一郎先生に聞いてみた。

■ヨーグルトではなく食物繊維なのはどうして?

「今回の研究者たちは、アフリカや南アメリカの農耕民族と、アメリカに住む人の腸内細菌を比較しました。農耕民族の腸内細菌には多様性があり、都市部に暮らす人には多様性が少ないということがわかり、これをベースに今回の実験を行っています」

 研究グループは、人間のデータをもとに、腸内細菌がいない無菌のマウスに、人間の腸内細菌を移植。

「マウスを食物繊維の多い食事を与えるグループと少ないグループに分け、4世代先まで腸内環境を調べました」

 1世代目は最初の状態で善玉菌が60%だったが、食物繊維の少ない食事をとっていると50%に減り、その子どもは40%に、さらにその次は20%にまで下がってしまった。

「ここまでくると、いくら食物繊維が多い食事をとっても、元には戻りません」

 わずか3世代で、悪玉菌がウジャウジャの最悪の腸になってしまったのだ。一方、食物繊維の多い食事をとっていたグループは、4世代先まで最初の状態からほとんど変わらなかった。そもそも子孫の腸内環境を守るのに、ヨーグルトではなく食物繊維なのはどうして?

「ヨーグルトはもちろん腸内環境を守ることに有効ですが、定着せずに通り過ぎていくものです。一方、食物繊維は自分にもともといる善玉菌を増やしてくれるのです」

■食物繊維のプレバイオティクス効果

 食物繊維が健康によい働きをしていることは、広く知られている。それを分類すると次の9つになる。

1.糖質の吸収を抑える

2.脂質の吸収を抑える

3.お通じ改善

4.腸の病気予防

5.プレバイオティクス効果

6.ホルモン分泌機能向上

7.免疫機能向上

8.有害物質の排出

9.有効ミネラルの吸収促進

 今回の研究につながるのは、5番目の『プレバイオティクス効果』だ。

「プレバイオティクスとは、小腸で吸収されず、大腸まで到達し、乳酸菌やビフィズス菌のエサになって、善玉菌の増殖を助ける働きをするものです」

 子孫のお腹の中を守るには、食物繊維のプレバイオティクス効果にお世話になるしかないのだ。

「それには食物繊維をただとればいいというものではありません。上手にとるにはコツがあります」