前立腺がんは男性に特有のがんで、近年は増加傾向にあるといわれている。国立がん研究センターによると、将来、胃がん、肺がんに次いで前立腺がんの順に患者の増加が予測されている。'20年には、男性がかかるがんの1位になると言われるほど。大野教授らの研究にも期待がかかる。

「前立腺がんのワクチンの研究では、抗A抗体を持っている人は治療成績がよかったという報告もある。血液型によって、ある程度、薬の効果をふるい分けられるようになったら、効きにくい薬の投与はなくなりますから、患者へのメリットになります。

 ただ、がんのリスクを考えるうえでは、年齢や家族にがんを患った人がいるかどうかのほうが血液型よりも重要です」

すい臓がんにかかりやすいのは……

 血液型に関する多数の論文に目を通し、分析や研究を行っているのが、長浜バイオ大学の永田宏教授。

「病気との関連でいうと、“A型が多いかな”と感じる論文は多いんですが、まだ断言できる段階ではないですね」

 がん血液型に関するさまざまな論文の中で、関連性が科学的に証明されているのは、すい臓がんと胃がんだけ。

「'09年にアメリカの国立がん研究所が“血液型によってすい臓がんにかかるリスクが異なる”と発表しています」

 10万7000人を対象に、平均8・6年間にわたる大規模調査を行ったところ、血液型によって明確に差が出た。

「最もすい臓がんになりやすいのはB型で、なりにくいのはO型。O型のリスクを1としたとき、B型は1・72倍、AB型は1・51倍、A型は1・32倍、がんにかかりやすかった。この報告をきっかけに世界中で確認のための研究が行われ、これを支持する結果が続々と発表されています」

 すい臓がんのリスク因子には、肥満や糖尿病、喫煙などがある。

「すい臓がんと喫煙の関係を調べた研究によると、喫煙者のリスクは非喫煙者の1・8倍です。O型とB型の差は、タバコと同じくらいあると言えます。しかしながら、血液型は変えられないので、O型以外の人は意識的に健康診断を受けることで早期発見・早期治療のチャンスが広がるでしょう」