気をつけたい性感染症1『性器ヘルペス』
ヘルペスというと、口のまわりに痛いボツボツができる病気を想像……。
「性器ヘルペスは、口唇ヘルペスの仲間です。女性では性器クラミジアに続いて多いメジャーな病気で、単純ヘルペスウイルスというウイルスに感染することで起こります。口唇ヘルペスは主に1型、性器ヘルペスは主に2型のウイルスです」(尾上泰彦先生、以下同)
2012年のWHO(世界保健機構)の調査では、14歳~49歳の年齢層において11%がヘルペスウイルス2型に感染していると推定され、女性は男性の2倍近く発症しやすいとしている。
「性器ヘルペスの症状は、性器やその周囲に痛みやかゆみを伴う小さな水ぶくれができ、発熱などの症状が出ます。性器の左右対称に水ぶくれが破れてただれができるので、排尿するときに痛み、脚の付け根にも痛みや腫れが起こり、歩くのがつらくなることもあります」
主にセックスでウイルスに感染し、潜伏期間は2日~10日。症状が出ずに、そのまま潜伏するものもあるという。
「単純ヘルペスウイルスの特徴は神経節に潜伏することです。1型は主に三叉神経節、2型は仙骨神経節に潜伏します。そのため、排尿障害や便秘など末梢神経障害や強い頭痛など神経に関わる症状を伴うこともあります」
症状が進んで、尿意を感じなくなるエルスバーグ症候群(神経因性膀胱)になると、排尿ができなくなったりするため、入院してカテーテルの挿入が必要となるケースもある。このような神経症状は男性に出ることは少なく、女性が圧倒的に多いという。
さらに、やっかいなのは神経症状だけでなく、再発を伴うこと。
「単純ヘルペスウイルスを薬で死滅させることは難しく、1度、感染すると生涯にわたり潜伏します。健康なときは、ウイルスは免疫で抑えられて活動ができませんが、疲労やストレスで免疫が低下したときに再発します。月経やセックスもストレスになり、再発の原因になることもあります」
毎月、再発を繰り返し、生活に支障が出ることもあるという。しかも、再発時の症状は女性のほうが強く出る傾向があるというのだ。
「夫に先立たれた女性の患者さんが“ダンナは財産を残してくれなかったけど、ヘルペスだけは残してくれて再発のたびに思い出す”と言っていました」
なぜ、女性のほうが発症しやすいのか?
「粘膜はウイルスが活動するのに適した環境で、外陰部や腟内など女性は男性に比べて粘膜部分が広範囲だからです。また、免疫能力を低下させる黄体ホルモンの影響で、排卵後や妊婦は感染しやすい状態になります」
女性は粘膜部分が多いことから感染もしやすい。とにかく感染しないことが重要だ。