ガッテン! に学ぶ「新型コロナウイルス対策」!?
中国の武漢市からチャーター便で帰国した日本人2人が当初、新型コロナウイルスの検査を拒否したというニュースに、驚いた人も多かったのではないでしょうか。症状がないため、あるいは希望的観測で、「私は大丈夫!」と思う心理、“正常性バイアス”が働いたのでは、という憶測がネット上に飛び交いました。
“正常性バイアス”とは、予期しない出来事が起きると、心の平安を保つために正常の範囲だと思い込む心のメカニズム。昨今では災害時に、よく取りざたされるフレーズです。
実は、これと同じことが大腸がん検診の精密検査を受けない人の心でも起きており、命を危険にさらしている可能性が高い。田村さんと小澤さんは、この番組制作を通して、そのことを発見していたのです。
大腸がんをテーマにした'20年1月29日の『ガッテン!』放送後には、ネット上で「ガッテン! で言及されていたことは、まさにこの新型コロナウイルス検査拒否の話と一緒だ」と話題になりました。
「便潜血検査で陽性になった人たちには、“大きな病気をしたことがないから、私は大丈夫!”と思っている人が多くいらっしゃいました。なかには、これまで出血がずーっと続いているのに、『いつもどおり痔の血が出た結果だと思って、あ、やっぱりか、と思った程度でした』と話される方もいて……。はたから見ると深刻な状態でも、正常だととらえてしまうことが人間にはあるんだと驚きました」(田村ディレクター)
番組で取り扱った「精密検査に行かない人の心理状態」の解明には、国立がん研究センターの協力がありました。国立がん研究センターでは、1人でも多くの人にがん検診を受けてもらうための方策を、あの手この手で真剣に練り続けています。
田村さんと小澤さんは、「検診に、“ついつい”行きたくなってしまう仕掛けづくり」をモットーに、国立がん研究センターの溝田友里さんとともに、どうやったら受診率が向上するかを強烈に意識したといいます。
「実は調べてみると、私たちだけでなく厚生労働省や国立がん研究センターも、国内での大腸がん予防対策の遅れに危機感を持っていました。そこで、ガッテンの番組放送に合わせて検診を促すリーフレットを配布する、『大腸がん撲滅キャンペーン』をすることに。キャンペーンにご賛同いただいた自治体に、精密検査を受けていない方へ受診を促すお知らせをお送りしてもらうことになったのです。
そのお知らせのなかには、がん研究センターが独自に作成したリーフレットと、ガッテンの放送内容を盛り込んだお知らせが同封されています」(小澤デスク)