ビタミンB1は感染防御にも関係
また、ビタミンB1は、ワクチンだけでなく、新型コロナウイルスの感染防御に関係している重要な抗体を作る際にも必要だという。
新型コロナウイルスは主に鼻やのどの粘膜から私たちの体内に侵入してこようとするが、そのときに働くのが粘膜免疫という免疫システム。「IgA抗体」という抗体が唾液などに分泌され、新型コロナウイルスに強く反応して、私たちの鼻やのどの粘膜から体内に侵入するのをブロックしていることが最新研究でわかってきた。
「新型コロナ患者を対象にした研究から、初期の感染防御にIgA抗体が重要だという論文が、世界でもっとも権威ある学術雑誌のひとつである『サイエンス』の姉妹誌に載り、いま注目されています」
頼りになるそのIgA抗体も、ほかの抗体と同じように、ビタミンB1が不足していると減ってしまうという。
「IgA抗体は新型コロナだけでなく、インフルエンザや風邪のウイルスからも身体を守ってくれています。感染症予防のためにも、ビタミンB1を積極的にとるのがおすすめです」
ビタミンB1は豚肉に特に多い
ビタミンB1は体内にためておけない栄養素なので、継続して食べるようにしたい。
うなぎやたらこにも多く含まれているが、うなぎは高価で、たらこは塩分が気になる。日常的に食べるなら豚肉が手ごろだ。脂身の少ないヒレ肉などの赤身肉やハムに多く含まれている。ちなみに、食卓によく登場する豚ばら肉は100g中0・51mg。脂身が多いのでビタミンB1はヒレ肉の半分以下だ。
また、豚肉と一緒に、にんにくやニラ、玉ねぎを食べるのもおすすめ。それらに含まれるアリシンという成分のおかげで、ビタミンB1の吸収が約10倍もアップするのだ。
「豚の赤身肉とニラで炒めものを作ったり、ボンレスハムと玉ねぎでちょっとしたサラダを作ったりするのもいいですね。ちなみに、ビタミンB1は玄米にも多く含まれているので、玄米食の人は日常的にビタミンB1をとっていることになります」
厚生労働省による食事摂取基準では、成人女性は1日に約1・1mg、成人男性は約1・4mgのビタミンB1をとるよう推奨されている。豚ヒレ肉なら100gでほぼ足りる計算だが、実際の摂取量は平均0・95mgといわれている。足りていない人が多くいるのだ。
いまこそ意識してとりたい栄養素がビタミンB1といえるだろう。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センター センター長。著書に『善玉酵素で腸内革命』(主婦と生活社)がある。