乳がん経験者に聞く早期発見の大切さ
乳がん発症から6年、森沢優子さん(59歳・仮名)
53歳の夏、乳がん検診がきっかけで両乳房にがん発見
→同年秋に手術で両乳房全摘。その後、2種類の抗がん剤治療
→ホルモン剤を毎日服用し、3か月に1度の血液検査と半年に1度の画像検査で経過観察中
「なんで私が……やっと子どもが大きくなって、これからというときに、と頭が真っ白になりました」と話すのは、6年前に乳がんを宣告され、両乳房を全摘して、抗がん剤治療を経て現在も薬を服用中の森沢優子さん(59歳・仮名)。
「何となくしこりのようなものがあるなあと前々から思っていたんです。それで市から検診の案内がきたときに、夫からも受けたほうがいいと言われて」(森沢さん、以下同)
以前の職場などの検診では問題なしだったので、今回も大丈夫だろうと思っていたところ、要精密検査の知らせが。マンモトーム生検と呼ばれる詳しい検査を受けたところ両方の乳房にがんが見つかった。
生活は一変。慌ただしく手術の日程が決まり、検査、そして入院。
「左右とも乳頭の下あたりにがんがあり、左は別の場所にも小さながんが。右は温存可能と言われましたが、再発も怖かったので……」
結局、両乳房を全摘することにした。さらにつらかったのが抗がん剤の治療だ。
「開始2週間後に髪がごそっと。眉毛やまつげも一気に抜け落ちました」
また、足は歩けなくなるほどむくみ、爪も茶色に変色。味もわからなくなったという。ただ、森沢さんは治療に励み、現在は再発を防ぐためのホルモン剤を服用するだけですんでいる。
今、元気な身体を取り戻した森沢さんは乳がん啓発活動を行っているNPO法人「くまがやピンクリボンの会」で、月1回程度の情報交換会に参加。
「最新の治療や薬の勉強会、病院の情報交換のほか、気楽なお茶会などがあり、みな和気あいあいと明るくて、心のよりどころです」
その場でしばしば話題にのぼるのが、乳がん検診の大切さだ。
「もし検診を受けずに見つからないままだったら命はなかったかもしれません。だから、検診はきちんと受けてくださいとみなさんに言いたいです。がんが見つかったらどうしようではなくて、見つかれば治療に進めます。治療はつらい面もありましたが、私は元気になりました。ぜひ検診を、と切に願っています」
教えてくれた人……稲垣麻美先生 ●いながき乳腺クリニック院長。湘南記念病院、聖路加国際病院、三井記念病院に勤務。2019年より現職
石田二郎先生 ●医療法人永仁会理事長、Seeds Clinic 新宿三丁目院長