検診は医師や技師の失業対策

 では、なぜデメリットの多い検診が続けられているのか? その理由は日本の医療システムにあった。

近藤誠医師、近藤誠がん研究所所長(撮影/齋藤周造)
近藤誠医師、近藤誠がん研究所所長(撮影/齋藤周造)
【画像】検診時はご注意を!放射線に弱い「臓器5つ」

「検診や人間ドックは無効であるというデータがありながら、医師はインチキ発言を繰り返しています」

 その理由は、なんと医師の失業対策だというのだ。

「日本の人口は減少の一途である一方、医師の数は右肩上がりに増えています。さらに最近医学部が増設され、医師の数の増加は加速する一方です。そこで健康診断やがん検診のシステムを増大させることが大事な戦略となる。もっとも実入りがいいのは、がん検診でしょう。がんはいわば老化現象の1つ。それに病名をつけて病人にすれば、自動的に医療費が増えるのです」

 検査自体の手間はわずかでも、所見を見つければ、CT、内視鏡、組織検査など高額請求が可能になる。

がんと診断すれば手術、抗がん剤、放射線治療、入院、投薬、リハビリと医療収入はアップします。さらに、治療後、定期的な検査を行い、安定収入につながります」

健康なときに医師には近づかない

 健診やがん検診が正義であるかのように感じていた一般人は、どうしたらいいのか?

「安全に長生きするためには健康なときに検査を受けないこと、医師に近づかないことにつきます。健康というのは、元気で体調がよく、ごはんがおいしくて、日常生活の動作に不自由がないときです。老化現象による腰の痛みなど多少の症状があっても、元気に生活ができていれば“健康”。日常生活に支障が出るほどの重い症状が出てから、検査や治療の必要性が出てきます」

 自営業や専業主婦は健診を受けなくてもすむが、やっかいなのは職場健診だ。

「全面的に健診を拒否することでいちばん安全に長生きができます。しかし、健診を受けさせようとする人事部との抗戦が待ち受けているかもしれません。その時は、健診は受けるけれども、検査数を減らす方法があります。身長と体重だけ測定するというのでは気が引けるなら、血液検査だけと申し出てみてはいかがですか? たとえ結果が異常値であっても理屈がわかっていれば無視することができます」

 医師や検診から離れたら、われわれはどのように生活したらいいのか?

「健やかに長生きするには平凡ですが、食を見直し、いきいきと生活を送ることです。バランスのよい食事をとって、よく頭を使い身体を動かしましょう」

教えてくれたのは…近藤誠先生
医師。近藤誠がん研究所所長。1948年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同医学部放射線科に入局、その後、同医学部講師となる。乳房温存療法のパイオニアであり、1996年に出版した『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋)がベストセラーとなり、ライフワークとして抗がん剤やがんの標準治療の問題告発に精力的に取り組む。

<取材・文/週刊女性取材班>