WHO(世界保健機関)の定義では、新型コロナの罹患後症状は「新型コロナウイルスに罹患した人に見られ、少なくとも2か月以上持続し、ほかの疾患による症状として説明がつかないもの」と説明している。
ところが、コロナ後遺症と診断された人のなかには、そもそもコロナに感染した覚えがないという人も。東京都に住む松尾重弘さん(35歳・仮名)もそのひとりだ。
「8月上旬ごろ、首のリンパの腫れと身体中の痛み、倦怠感があり、近所の病院で診療を受けました。身体に熱っぽさは感じましたが、検温では熱は出ておらず、抗原検査とPCR検査でも陰性。その後、血液検査などを受けたものの特に異常は見当たらず、とりあえずそのまま様子を見ることになりました」(松尾さん)
症状は4日ほど続いたあと、自然に回復。しかし8月下旬に同じような症状が再発し、再度受診することとなった。
「より詳細な検査を受けましたが、そこでも異常は見られず、原因は不明のまま。ただ、同居する家族が7月にコロナに感染していたことを問診で話すと、そのときに無症状で私もコロナに感染していたのでは……ということになり、そのままコロナ後遺症と診断されました。
あまり釈然としない診断で、治療も漢方薬を処方されたのみ。ほかには有効な治療法がないと言われてしまい、途方に暮れています」(松尾さん)
松尾さんはその後も回復と発症を繰り返しており、原因がわからないコロナ後遺症を抱えて不安な日々を送っている。コロナ後遺症は治療法も確立されておらず、医師たちも手探りの状況だ。
「コロナ後遺症を専門で診る医療機関も少しずつ増えてきていますが、まだ治療法のエビデンスを積み重ねているような状況。
コロナ後遺症に対しては“Bスポット療法”という治療法をとる病院も多いです。上咽頭に塩化亜鉛などを塗布するという内容ですが、これも有効性が確定しているわけではなく、やってみないと効くかどうかはわかりません。もちろん対症療法でできることは手を尽くしますが、そもそもの根本的な治療法がなく、正直お手上げという医師も多いのではないでしょうか」(新見先生、以下同)
明らかになっていないことの多いコロナ後遺症
一方で、コロナ後遺症の治療の選択肢として、漢方への注目も集まっているという。
「当院では、その人の症状に合う漢方薬を処方し、予後を見ることにしています。漢方は大きな副作用もないため、リスクを負うことなく試すことができるのが利点です。西洋医学でもまだ治療法が明らかになっていないような病気においても、漢方薬は患者さんにとっての“納得解”になりえますし、現在とることのできる有効な選択肢のひとつだと考えています」
原因や治療法など、いまだ明らかになっていない部分が多いコロナ後遺症。もし自分に疑わしい症状が出た場合、どう行動すべきだろうか。