標準治療がベストな治療法

 がんの治療法を調べると必ず目に留まるのが標準治療という言葉。「平均的な」とか「並み」の治療法と思いがちだが、実は違う。がんの進行具合や性格、遺伝子情報などに応じ、最も安全で、かつ最も効果があると科学的に証明された治療法のこと。

 ということは、標準治療イコール現在受けられるなかでベストな治療法ということだろうか。

「知っていただきたいのは、標準治療はあくまで治療選択の“情報”としてはベストだということです。それを最大限に活かす医師の実践力がなければ最善の治療にはなりえません。経験・技量不足の医者が手術ミスをおかしたり、抗がん剤に不慣れな医者が管理を怠れば、患者さんを苦しめるどころか、標準治療で命を縮めてしまう場合すらあるでしょう」

国が認めた先進医療なら安心

 保険のCMではないが「先進医療」という言葉には期待を抱かせるイメージがある。

「先進医療が標準治療より優れていると思うのは、大きな誤解です。実は先進医療とは、将来的に標準治療になれるか否かが検討されている実験段階の治療のことです。国が認めた施設のみで『患者さんの自費で臨床研究として実施してもよい』ことになっていますが、実際、結果をみて、標準治療としては無理があるとして打ち切られた治療法もあります」

 何よりも先進医療にかかる費用は全額自己負担(それ以外の診察・検査・入院料等は一般の保険診療としてみなされる)となり、なかには数百万円を超えるものもある。

「少なくとも現段階では、標準治療に勝っているのかわからないので保険診療としては無理があり、患者さんに自己負担させてデータを集めているわけです。それなのに、あたかも特別感のある、ハイグレードな治療であるかのように宣伝をする施設や医師らは批判的に見たほうがいいでしょう。もちろん、現状の標準治療の効果だけでは頭打ちなところもあるので有望視されている先進医療もなかにはあります。ただ、言葉の持つイメージだけで効果のある優れた治療だと思い込まず、先進医療の利益不利益について医師の十分な説明を受け、納得のうえで選んでほしいと思います」