日本では約70%の人が肩こりを抱えているといわれ、これは世界でもトップクラスでまさに肩こり大国。肩に痛みがあったり、腕が上がらなかったり……。
誰でもこんな経験をしたことがあるはず。そんなとき、肩をもんだり叩いたりしてはいないだろうか。
痛みが悪化する!本当は怖い肩もみ
「自分で肩もみや肩叩きをするのは絶対にNGです。肩もみをしている最中や直後は気持ちよくて軽くなったように感じますが、それは一時的なもの。その感覚を味わうために肩もみを続けていると、肩こりが悪化したり、慢性化したりしてしまうのです」
そう話すのは、代官山クリニック院長の蘆田英珠先生。
「肩がこっているところに触れると、他の部分とは違う硬い塊がありますよね。その正体は縮んだ筋肉。
筋肉は本来、伸び縮みを繰り返しているのですが、“長時間の同じ姿勢”“重たいショルダーバッグなどを長期間、使用することによる筋肉への負担”“精神的ストレス”などの理由で一部の筋肉は縮みっぱなしになって、コリとなります。
筋肉の塊は線維が複雑に絡み合っているので、やみくもにもんだり叩いたりして柔らかくなるものではありません」
この筋肉の縮みが血行不良をもたらす。
「私たちが身体を動かすとき、筋肉が縮むことでパワーを出し、緩めるときは筋肉が伸びます。本来、この繰り返しによって血行を促していますが、縮んだ状態が続くと血液を押し上げる力が弱くなり、血行が悪くなるのです」
血行が悪くなることで痛みが出るのだ。
「血行がいいときは乳酸やリン酸といった疲労物質は血液が流し去ってくれますが、血行が悪くなるとどんどんたまってしまって結果的にダルさや痛みが出るのです」
そこで肩をもんだり叩いたりして、血流をよくしようとするわけだが、なぜそれが危険なのだろうか。
「たしかにもんでいるときは血行がよくなって肩が軽く感じられます。ただしこれは、もんだり叩いたりした刺激で筋線維が切れたり血管が傷ついたことで、それを修復するために一瞬、血行がよくなっているだけなんです。
つまり、筋線維や血管がケガをしている状態。これを繰り返すとダメージを受けて、より血行が悪くなったり、筋肉がさらに緊張して縮むので、痛みやコリを助長してしまいます」