「まさか自分が。間違いなんじゃないか……」
中川恵一先生は自分が膀胱がんとわかったとき、そう感じたという。
早期発見の“本当の大切さ”
「膀胱がんの最大のリスク因子は喫煙です。タバコを吸わない私にはあまり縁のないがんだと思っていました。それだけに、エコー検査で自分で見つけたときは『まさか』と思いました」(中川先生、以下同)
中川先生はお酒が大好きなこともあり、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝になっていないか、自分で定期的にエコー検査を行っていた。
せっかくエコーを当てるのだからと、ついでに膵臓や前立腺、膀胱などもチェックしていたところ、2017年に膀胱に小さな影があるのを発見。
ところが、「たいしたことはないだろう」とこれを放置し、1年半後に再びエコー検査をしたところ、1.4cmのがんを見つけたのだ。
「定期的にチェックをしながら、なぜ最初の段階で精密検査を受けなかったのか。『まさか自分が膀胱がんになるわけがない』という思いが、異変から目を背けさせたのかもしれません。がん専門医としては苦い経験です」
とはいえ、ステージとしては初期の段階。その後の手術で取り除き、現在は再発もなく、日々を送っている。そんな中川先生に、日頃から実践している「がんを遠ざける習慣」を教えてもらった。
習慣1:“見つけたほうがいいがん”を3つの検診でチェック
「がんで命を落とさないために重要なのが、がん検診の受診です。ただ、すべてのがん検診を受けるべきだというわけではありません」
中川先生が自身の膀胱がんを見つけたのは、自分で脂肪肝をチェックしているときのついで、という特殊な状況。一般の人は、有効性が確認されているがん検診を受けるのがベストだ。
「死亡率が下がるという有効性が確認されているのは、男性なら胃がん、肺がん、大腸がんの3つ。女性はそれらに加えて、乳がん、子宮頸がんの合計5つです」
がんは早期に見つけることができれば95%は治る。ただ、早期の場合は自覚症状がないため、元気でもがん検診を受けることが大切なのだ。
「私自身、がんになって『治る確率』が高い早期発見の重要性を改めて認識しました」
一方で、見つかっても大きくならない、あるいは自然に消滅するがんもある。そういったがんを見つけることはかえって不利益になり、「過剰診断」と呼ばれているので要注意だ。
「有効性が認められている、男性なら3つ、女性なら5つの検診を受けるのが一番メリットを享受できるといえます」