サプリが治療の妨げ、ヨガで骨折のケースも

「補完代替療法は、西洋医療を“補完”するもので、あくまでも治療の主役は西洋医療。脇役である補完代替療法を行うときは、主治医に相談することが大切です」

 では、実際にがん患者が行う補完代替療法にはどんなものがあるのか。順番に見てみると、1位がサプリメントの54%、2位が運動の39%、3位がマッサージ、骨格改善36%、4位が温泉、温熱療法29%(複数回答)と続く(※4)。※4「鈴木梢ほか、Palliat Care Res 12;731-737,2017」より 

 行う目的を見ると、抗がん剤などの副作用の軽減やQOL(生活の質)を上げるなど、人によってさまざまだ。医師はどう思っているのか。

「医師や看護師の中には、補完代替療法に対して否定的な考え方をしている人もいるようです。その一方で、健康食品は毒にも薬にもならないと、患者さんが希望するなら摂取は任せてもいいと認識している医師もいます」

 しかし、大野先生はがん患者がよく利用するにんじんジュースなどの健康食品、ビタミン類のサプリメントなどでも、まずは主治医や医療スタッフに相談し、安心して取り入れることが大切と話す。

「健康食品やサプリメントは治療薬の効果を妨げる可能性があります。治療薬との相互作用について、事前に調べてから利用しなくてはいけません。もし、主治医に相談しづらかったら、薬剤師や看護師に聞いてみてください。それを試したい理由や目的も伝えるといいですね」

 また、「運動」や「ヨガ」、「鍼灸」は指導者や施術者が患者の身体に触れたり、動かしたりする。必ず医師に相談してから行ってほしいという。

「極端な例かもしれませんが、ヨガの先生は目の前の生徒さんが、骨転移のあるがん患者さんだと知らない場合もあります。骨が弱っているのに無理なポーズをさせて、骨折に至るリスクもあるのです」

 鍼灸を受けるときも注意が必要。鍼治療ではまれに出血することがある。がんが進行している人や、抗がん剤治療をしている人は出血しやすい。

「これまでにがん患者さんの施術経験があり、主治医と連携が取れる鍼灸師に施術してもらうようにしてください」

 補完代替療法を精神的な支えにしているがん患者や家族は多い。だからこそ、利用することを自ら主治医にきちんと伝えて、正しく取り入れることが重要になってくる。

「家族やがん患者さんも、それぞれの補完代替療法を利用するときの心構えとして、チェックリストを確認しておくことが大事です」

がん民間療法利用の際はここをチェック!

■どのように効果を発揮するものなのか
■それは科学的な方法で検証された研究なのか
■現在受けている治療に影響があるか
■安全性はヒトで確認されているか。また副作用がないか
■施術者は免許など技術、知識を保証するものを持っているか
■施術者は自分と同じ病気のほかの患者を治療したことがあるか
■施術者が自分の主治医と情報を共有して、一緒に治療に取り組んでくれるか
​■費用はどのくらいかかり、どのくらい続ける必要があるか