熱心なファンたちとの交流に驚きと感謝
イベントではファンとの交流を楽しんだが、この時期、深刻な目の不調を抱えていたことをあとで告白している。
「突然、見るものが二重になってしまい、前がはっきり見えなくなったんです。片方の目ずつ見れば見えるのに、両目にするとよく見えない。合っていない眼鏡をつけているような違和感で、お湯をカップに注ごうとしても、カップからズレてこぼしてしまっていました」
眼科では異常が見つからず。大学病院の神経眼科にかかって原因が判明した。
「動きを司る筋肉である上斜筋の力が片方の目だけ抜けてしまっているとのことでした。その筋肉を動かす滑車神経の麻痺により、両目で見るときにうまく焦点が合わなくなってしまったのです。自然と再生するけれど、2、3か月を要すると診断されました」
無事に治ったものの、「このまま治らなかったらどうしよう」という不安と、大好きな車を運転できないストレスにさらされていた。
「そんなときも本やSNSの読者の皆さんとの交流が何よりも力になり、改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました」
最近では柏木さんのファッションをまねする人が続出するという現象も。さらに柏木さんのヘアスタイルは“由紀子巻き”と呼ばれ、美容院で同じヘアスタイルをリクエストする人が増えているという。
「髪の毛のボリュームがないのがコンプレックスで、巻き髪でふんわりと見せています。自宅では、アイロンではなく、昔ながらのホットカーラーで巻くのがポイントなんです。グレイヘアも素敵ですが、私はブラウン系のお洋服が好きなので、グレイヘアだと合わないかなと思い、カラーリングは続けていきます」
ファッションやヘアスタイルだけでなく、柏木さんが行きつけのお店にもファンが訪れる。
「新宿の伊勢丹が好きで、いつも休憩するお店があるのですが、インスタグラムにアップすると、遠方からもファンの方がいらっしゃっていました。最近では愛犬レアのトリミングをまねしましたという声をいただき、あまりの自分への注目度についていけない状況です(笑)」
本人は突然の“由紀子旋風”に戸惑いも覚えているが、柏木さんのファッションは一朝一夕で完成したものではない。
柏木さんのおしゃれを小さいころから見てきた長女の花子さんは次のように話す。
「簡単に選んでいるようにみえて、コーディネートを常にアップデートし、練っているので、ファッションセンスは努力と時間をかけて培ったものです。母の努力家でまじめなところを尊敬しています」(花子さん)
おちゃめで明るく、ファッションが大好きな“素顔の柏木由紀子”が世間に知れ渡ったことに、その素顔を誰よりも知っていた亡き夫がいちばん喜んでいるに違いない。
「生きていれば夫は81歳です。本が届いたときは、真っ先に主人の仏前に置いて、報告をしました。75歳になってファッションブックを出したなんて、びっくりしているんじゃないでしょうか(笑)」
何歳になってもおしゃれを楽しめること、イキイキと過ごせることを柏木さんは教えてくれる。今、悲しみの淵に沈んでいる人も、どん底を経験した柏木さんの元気な姿に勇気をもらえるに違いない。
かきうち・さかえ IT企業、編集プロダクション、出版社を経て、'02 年よりフリーライター・編集者として活動。女性誌、経済誌、企業誌、書籍、WEBと幅広い媒体で、企画・編集・取材・執筆を担当している。